相米慎二監督の遺作である『風花』を観た。
『風花』 長回しでの二人の掛け合いが面白い。 相米慎二監督の唯一無二の空気感。 監督:相米慎二 出演:小泉今日子 浅野忠信 麻生久美子 Amazon Amazon Prime Video |
小泉今日子×浅野忠信×相米慎二監督が描く、孤独な若手キャリア官僚とピンサロ嬢の姿を描いたロードムービー。
鳴海章による同名小説を『SWING MAN』の森らいみが脚色。
『PARTY 7』の町田博が撮影を担当。
2000年製作/116分/日本
配給:シネカノン
満開の桜の樹の下で目覚めた男と女。男は文部省のエリート官僚・澤城廉司で、女は30過ぎの風俗嬢・富田ゆり子。
澤城は酒を飲みだすと止まらなくなり、必ず記憶を失う。
現在は酒で失敗して謹慎中。
この日も、ここがどこなのか、隣の女が誰なのかさっぱり分からずにいた。
ゆり子の話では、彼女の故郷北海道への5年ぶりの帰郷に付き合うと約束したらしいのだが、状況を把握できないまま澤城はゆり子とともに北海道まで旅をすることになる。
ずっと気になってはいたが観ていなかった、キョンキョンと浅野忠信が主演で監督は相米慎二という本作を観た。
キョンキョンが風俗嬢という役柄で、エリート官僚の浅野忠信と北海道を車で旅するロードムービーという物語だが、ワケありな二人はなかなか心を通わすようには見えないが、「孤独感」や「挫折」を互いに抱えている二人だからなのか、何故か一緒にいるのだ。
相米慎二監督による長回しでの二人の掛け合いが、絶妙に心地良く面白い。
長回しゆえの緊張感も、演技でありながらリアルを見ているようで、退屈にならない。
素人がマネすると退屈になりかねないが、二人の存在感と相米慎二監督の演出力が、唯一無二の空気間を生み出している。
その空気感がとても丁寧で細部に至るまで相米慎二監督のこだわりが見える。
明るく振る舞っていたキョンキョンであったが、最後には自らの死を選ぶことになる。
こんな深夜の雪山で一人でクスリを過剰摂取するが、「早く助けろや!」とドギマギするほどに浅野忠信が辿り着かない。
やっと見つけて助けに来たはイイが、飲み込んだクスリを吐かせて、息絶えそうなキョンキョンを担いで雪山を歩く。
こりゃあ演者もスタッフも大変な撮影だったろうな、ということが頭に浮かぶ。
極寒の地で、映画の内容と同じ位に「命がけ」の撮影だったと思う。
そして本作が相米慎二監督の遺作となった。
他の相米慎二監督作品も観たくなった、といったところで「カット、カット」。
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