両国駅に降り立つと、力士の写真や手形が構内に飾られていて、その土地のパワーを感ずる。
駅近くにある江戸東京博物館は、カッコ良くてどデカくて外観からイマジネーションを刺激する。
美味しそうな飲食店が軒を連ねて、葛飾北斎が生涯のほとんどを過ごした墨田区の街並みの雰囲気に、「この街、好きやなぁ」と歩きながら思った。
そんな東京都墨田区に立地する『すみだ北斎美術館』に行ってきたのだ。
近代的な建物の中に、江戸後期に描かれた北斎の作品が展示されている。
海外からの来館者も多かった。
世界で一番有名な日本人画家の魂は、海を越えて、世代を超えて、今もなお引き継がれている。
今回の企画展では入り口を入ってすぐに北斎代表作である『富嶽三十六景』を景観出来る。江戸後期の日本の風景が北斎の目を通して、現代の僕たちの前に映し出される。
『富嶽三十六景』の約20点もの展示されていた霊峰富士をテーマにした風景は、その当時の日本の美しい自然の匂いが伝わってくるようで、思わず深呼吸をしてしまう。同時に北斎の卓越した技術に深い溜め息が出る。
北斎の『諸国滝廻り』も幾つか目の当たりにすることが出来た。
北斎作品の構図は本当に素晴らしい。
まるで神の視点であるかのような美しい構図は、北斎が俯瞰で見ているのかのようでありながら、あまりにも丁寧に細かく描写されているので、対象物に接近して見ている北斎が存在する。
北斎は筆を手に、離れて見たり近づいて見たり、色んな場所に立ち色んな方向から絵を描いていたのだろうか。
常設展では年表で北斎の生涯を辿りながら、『北斎漫画』や『絵本』等、企画展では見られなかった作品を堪能する事が出来る。
これほどまでに卓越した技術を持ちながらも北斎は80歳を過ぎた頃に、娘のお栄に対して「猫1匹さえ描けない」と涙を流して語ったというのだ。
6歳の頃から絵を描いてきた北斎は、70歳以前までに描いた絵は取るに足らないもので、73歳にしてようやく動植物の骨格や出生を悟ることができたと。そして80歳ではさらに成長し、90歳で絵の奥意を極め、100歳で神妙の域に到達し、百何十歳になれば1点1格が生きているようになるだろうと、絵手本『富嶽百景』初編の最後にある跋文で記した。
絵を極めようとしていた北斎の静かなる情熱が、ぐんぐん迫ってくるかのようで、終始圧倒されっぱなしだ。
僕の好きな『富士越龍図』も飾られていて、嬉しい。
北斎館から景観出来るスカイツリーも味わい深い。
墨田区の街の雰囲気がとても気に入った。北斎を身近に感ずることが出来て、アートや歴史を大事にしている。
両国国技館があるので相撲を楽しんだり、建ち並ぶちゃんこ屋で一杯呑むのも良さそうだ。
「また来よう!」
この記事へのコメントはありません。