銀座に所在する老舗の画廊、憧れの日動画廊にて遂に『昭和会賞受賞記念 松本亮平展』が開催。「いきものたちの生命」を描いてきた松本亮平さんの渾身の新作が披露されている。
日動画廊が主催する昭和会展で、最高賞である昭和会賞を亮平さんが受賞したのは2019年のこと。それから勤めていた会社を退職して、現在、画家として一層精力的に取り組んで活動されている。
今回、日動画廊で展示された亮平さんの作品が、今までその作品を知らなかった人たちの目にも触れる素敵な機会になるのではないだろうか。
一目見れば「面白い」、動物たちの世界へ前のめりに引き込まれていく。
今回の展示では猫をモチーフにした作品が多く、亮平さんの自宅で飼っている猫をモデルに描かれた遊びゴコロもあり、思わず微笑んでしまう。
猫好きな人も多く、お気に入りの猫作品を見つけたら、部屋に飾りたくなるのではないだろうか。
その殆どが、既に売約済であった。
先日、4月26日に日本テレビで放送された『ぶらり途中下車の旅』では、石野真子さんが亮平さんのアトリエに訪れ、作品が紹介された効果で日動画廊に足を運んだ方々もいるようだ。
放送を観て亮平さんの作品を気になった方が日動画廊での個展を知るキッカケになった、素敵なタイミングである。
『十二支図』では12種類の干支が描かれているのだと頭の中で干支を数え上げていくと、ちゃっかり猫が紛れ込んでいた。
長沢芦雪の龍の襖絵に動物たちが集まってきているというのだから愉快である。
亮平さんの作品には伊藤若冲や円山応挙など、江戸時代の絵師たちによる作品をモチーフにして描かれたものがあり、元ネタを知っていると更に楽しめたり、江戸時代の絵師について調べ見比べてみたりと、アートを探求する喜びに出逢うことが出来る。
100号の大作『千客万来』では、どんどんと動物のお客さんが集まってきている。
富士山を背景に招き猫が。
フクロウを発見。
小さな昆虫たちも集まってきている。
正面からだけではなく、角度を変えて左から覗き込めば臨場感が高まる。
続いて右から。自分も招かれた一人であるような錯覚を味わいながら、絵の中に入り込む。
動物たちの息遣いが聴こえてくる。
お祭りでも始まるのだろうか。
皆で歌い、ダンスパーティーでも開催されるのだろうか。
ワクワクする想像力を掻き立てる『千客万来』は、色んな視点や角度を変えて、俯瞰で見たり、絵の中に入り込んだりしながら楽しめるユーモア溢れる作品だ。
『繋がり』は、超巨大なクジラと繋がった動物たちが描かれていて、とても不思議な絵である。
ワニにくわえられたカバ、ライオンに鼻で巻き付くゾウ、逆さになったキリンの足元だけが見えている姿も面白い。
空には大きな月が浮かび、水平線の向こう側で太陽が海に浮かぶ。
月の輝きと夕焼けに染まった空と海のグラデーションが美しい。
新作を次から次へと発表される大きなパワーに満ちた創作意欲と、想像力溢れるバラエティーに富んだ作品に、毎度驚かされるばかりだ。
動物たちと仲良くなれる、そんな空間に立つ喜びがある。
日動画廊が動物園に、いや「動物たちの楽園」になった歴史的な個展だ。
檻のない動物たちの暮らす壮大な世界が自由であるなら、コロナや戦争で辟易している不自由な僕たちの世界の方が檻の中にいるのかもしれない。
そんなことを考えていると彼らの楽園の中で暮らしたくなるが、無限の発想を持っていれば檻の外へと飛び越えて行けると信じたい。
来る日も来る日も絵筆を握って、自由な世界へと連れて行ってくれる亮平さんの絵が、窮屈なモノクロの日常を明るく優しく彩ってくれるのだから。
『昭和会賞受賞記念 松本亮平展』 2022年5月10日(火)〜23日(月)・日曜日休廊営業時間:平日10時半〜18時半 土曜11時〜18時 最終日は17時まで日動画廊本店 東京都中央区銀座5-3-16 電話03(3571)2553 |
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