蜷川実花監督の『人間失格 太宰治と3人の女たち』を観てきましたがな。
7月に蜷川実花監督の『Diner ダイナー』を観に行ったばかりだから、短期間で新作二作品も劇場公開するなんて凄い精力的に活動をされている。
今年撮影された蜷川実花監督のNetflixオリジナルシリーズ『Followers』が、来年配信予定だというし、今、勢いに乗っている監督である事は間違いない。
僕も個人的に蜷川実花監督は好き。
写真家としても好きな人だし、蜷川実花さんは、他者を無視したアートに偏らず、しっかりとアートとエンタメを考えて表現している。アートとエンタメの両輪を回しながらも、自分の蜷川実花ワールドという軸を思う存分表現しているって凄いことなんですよね。
芸術家が映画を撮るとアート色が強くなりがちで、他者は理解不能であったりするけど、蜷川実花監督は観る人の事をちゃんと意識して、プロのエンタメを観させてくれる。
太宰治の『人間失格』の書籍は持っているんだけど、恥ずかしながら未読なんです。だから内容は知らない。
今回の映画は『人間失格』の物語を映画化したわけではなくて、太宰治と三人の女性の物語なんですね。
恥の多い人生を歩んできた僕自身も人間失格な人間なのですが、蜷川実花監督作品という事もあって、映画館へ観に行ってきました。
実際の太宰治がどうだったかは知らないが、小栗旬演じる太宰治はかなりのプレイボーイ。
現実世界で小栗旬の風貌で有名作家だとしたら、そりゃモテて当然ではある。
ひとつ僕が言えるとしたら、劇中の太宰治は女性を泣かせ続けていたことがマイナスポイント。女性を笑顔にすることが本当の意味でモテる男だろう(うるさいわ!)。
そう、この映画を観て気になったのは、「結局みんな苦しんでるんやん!」ということ。
恋というものは楽しいだけではなく苦しいものだけど、太宰も三人の女性も苦しそうやなぁ~と思った。
その中でも沢尻エリカは、太宰との恋を一生のものとして、楽しそうにはしていたが。
沢尻エリカという女優は、騒動やら何やらを経て一皮むけた素で美しい女性になったと感じる。昔のツッパッた雰囲気もなく、沢尻エリカを取り巻く空気感がすごく柔らかくなった(何様の視点やねん!)。
この時代の作家は「死」というものを美学にしている節があるが、太宰が自分の全てだと思い込んでいる二階堂ふみは底なし沼のように太宰と恋と死にハマッていく。
二階堂ふみは十代の頃の『ヒミズ』の時から、天性の才能を発揮していた。もちろん多くの努力を積んできただろうが、この若き才能は今後何十年も活躍していくだろうと思う(だから何様やねん!)
宮沢りえは「ぶっとび!!」時代の面影はなく、女優として深く深く進化していった。演技ひとつひとつに深みがあり、太宰治の奥さん役は、他の女優では務まらなかったと思わされる程に、宮沢りえの演技は「足す」でも「引く」でもなく、太宰治の奥さんそのものであった。
女優として、人間として、人生の色んな「すったもんだ」を経て、内面から湧き出る魅力を放っている。
三人の女性の演技は素晴らしく非の打ち所がない。
太宰治を演じた小栗旬も、さすが小栗旬だと言わざるをえない。
時にはカッコ良く、時には泣き虫でクズ、そんなお茶目な太宰治を表現できたのも小栗旬ならではだろう。
蜷川実花監督は、まるで花々のように素敵な役者さん一人一人の個性の一番美しいところを引き出して、色とりどりの鮮やかな蜷川実花ワールドの中で自在に操るのだ。
蜷川実花監督の映像美と音楽と役者さん、その全てが物語を殺すことなく、物語の中で大いに活かされて生きている。
この記事へのコメントはありません。