『佐々木、イン、マイマイン』を観たのだ。
『佐々木、イン、マイマイン』 佐々木は一歩間違えれば危険なキャラ。 過去と現在が上手く構成されている。 監督:内山拓也 出演:藤原季節 細川岳 萩原みのり |
初監督作品『ヴァニタス』がPFFアワード2016観客賞を受賞、人気バンド「King Gnu」や平井堅のMVなどを手がける内山拓也監督の青春映画。
主人公・悠二役を『his』の藤原季節が演じる。
佐々木役を『歩けない僕らは』の細川岳。
萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、「King Gnu」の井口理、鈴木卓爾、村上虹郎らが出演。
2020年製作/119分/G/日本
配給:パルコ
俳優になるために上京したものの鳴かず飛ばずの石井悠二(藤原季節)は、恋人としての関係が終わっているユキとの同棲生活も解消出来ずにいた。
悠二は高校の同級生の多田と再会を機に、在学当時にヒーロー的存在だった佐々木との日々を回想していく。
悠二はある舞台出演のため稽古に参加して稽古が進むにつれ、舞台の内容が自身の過去と現在にリンクして、停滞ぎみだった悠二の日常が加速していく。
そんな矢先、佐々木から数年ぶりの電話がかかってくる。
評判がイイらしく気になっていた本作を観てみることに。
先ずは『佐々木、イン、マイマイン』というタイトルが良かった。ちょっと、おふざけを連想させるキャッチーなタイトルが、気軽に観てみようかというキッカケの第一歩になる。
内容を知らないで観ていたので「登場しない佐々木」のことを語る『桐島、部活やめるってよ』をパクッたような作品なのか?と思ったら、しっかりと佐々木が登場してきたので一安心。
役者志望で上京したが自堕落な生活を送っていた悠二が、高校生の頃に友達であったお調子者の佐々木というクラスメイトを思い出し、数年ぶりに再会を果たしながら過去を振り返り現在の自分を見つめ直す映画である。
回想シーンでの高校生の彼らが自転車で暴走するシーンがなかなか良かった。
バイクではツマラナイし、自転車で悪ふざけをしながら疾走する彼らの青春時代が一瞬で想像出来るシーンになっている。
佐々木は「佐々木!佐々木!佐々木!」というコールがかかると、調子に乗って服を脱ぎだして全裸になる。
本作の映画を描くにあたって「全裸で踊り出す」という光景は、佐々木という人物を語る上で必要不可欠であり、佐々木の異常なバカッぷりを認知させるためには重要なエピソードである。
しかし、この全裸バカを素直に「面白い」と思えるか、「最悪」と思ってしまうかで、佐々木に対しての共感ではなくて嫌悪感を抱いてしまうかもしれない分かれ道であると思う。
嫌悪感を抱くまではいかなくても佐々木みたいなヤツがクラスメイトにいたら、僕なんかは「何が面白いねん、ウザッ」と思っているだろう。調子にノッて全裸になるヤツのギャグセンスなんて面白くも何ともないし、痛々しくて不憫でならない。
大人になった佐々木がパチプロになって、短気を起こしてケンカを吹っかけたり、散らかった部屋で人生投げやりで生きているような暮らしぶりも正直関わりたくないヤツなのだ。
そんな佐々木でも「佐々木を大事に想う」友達が数人いるのが不思議なのと同時に羨ましい限りである。
佐々木を演じる細川岳はイイ顔つきをしていて、佐々木という「一歩間違えれば危険なキャラ」を好演していた。
あとカラオケボックスで出逢った苗村という女性の絶妙な間合いの演技と表情が素晴らしく良かった。
佐々木を回想しながらの過去と、上手く行かない現在、また佐々木視点での日常、散りばめられたシーンを上手く物語として構成させている。
才能ある若者たちが集結して、それをカタチにした内山拓也監督の次回作も観てみたい、と思ったところで「カット、カット」。
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