『神在月のこども』を内容を全く知らないで観たのだ。
『神在月のこども』 シンプルはイイが雑。 「どこかの宗教映画」感。 監督:白井孝奈, 四戸俊成 出演:蒔田彩珠, 坂本真綾, 入野自由, 柴咲コウ |
神話の地・出雲を目指して駆ける少女の成長を描いたファンタジーアニメ。
『おおかみこどもの雨と雪』『かぐや姫の物語』などの作画を手掛けた白井孝奈がアニメーション監督を務める。
主人公カンナの声を『朝が来る』の女優・蒔田彩珠が務める。
神使の兎・シロを坂本真綾、鬼の少年・夜叉を入野自由と人気実力派声優が演じる。
2021年製作/99分/G/日本
配給:イオンエンターテイメント
母を亡くしたことで、大好きだった走ることと向き合えなくなった12歳の少女・カンナ。
固く心を閉ざす中で母の形見に触れたカンナの前に一羽の兎・シロが現れ、出雲への旅にいざなう。
「出雲に行けば亡き母に会えるかもしれない」と、カンナはシロと共に出雲へ走り出す。
神々を迎えて祭る神話の地でもある出雲に向かうカンナの行く手を阻むのは鬼の少年・夜叉。
人々と神々の境界をまたぎ、駆ける少女の旅がはじまる。
物語の内容を全然知らないで観たが、物語もアニメーションもかなり雑な作りだという印象。
木々たちが大地を巡り天空へと上昇していくシーンなどはアニメならではの表現で、ジブリアニメなら大興奮するが、本作のショボさでは感動を覚えない。
ジブリや新海誠、細田守、京アニ、STUDIO4℃等、クオリティーの高いアニメを観ている日本人に、「それ以下のクオリティー」を届けてしまうことは百も承知なのだが、雑な作りが垣間見えたことがマイナス要因である。
予算的な問題やスタッフの不足等、満身創痍な状況下でアニメ制作をすることの大変さは理解したいが、鑑賞者にとっては製作陣の背景は関係ないものなのだ。
結果を出せなかったスポーツ選手が「実は体調が悪くて」と言い訳されたところで、そんな背景は知ったことではない。
主人公のカンナに魅力を感じなかったところも大きな問題である。
『魔女の宅急便』でキキが空を飛べなくなり悩みつつもクライマックスで空を飛んだシーンは感動を呼んだが、本作のカンナが走りたくないと悩んでいることには全く共感出来ない。
「母が死んだのは自分のせいだ」と自責の念に駆られているが、「体調悪い中でマラソン大会を見に来た」だけでは説得力がなさ過ぎるではないか。テキトーに作った理由だとしか思えない。
病気に侵された母が「走ることは禁止」と医者に告げられていたのにも関わらず、何かしらの大きな事件や事故でカンナを救うために走らざるを得なかったとか、トラウマになりそうな程の悲劇を悔やんで自分を責めているのなら理解出来るのだが。
カンナの声も合ってなかった。声を担当した女優の蒔田彩珠はヘタではなかったと思うが、単純にカンナと声が合ってない気がした。
その点カンナの幼い頃を演じた声優さんの声はちゃんと合っていたので、「プロの声優は凄い」と思わざるを得なかった。
母役の声を担当した柴咲コウは上手いなぁと思ったが、やはり脇を固める声優陣の上手さは圧倒的である。
主人公に魅力を感じないことが最大のマイナス要因だったと思うが、物語も結構、雑。
雨降る神社で起きた摩訶不思議な状況を大して驚きもせずに、すんなりと受け入れたカンナにも疑問を感じたが、そういった細かい疑問が数多く点在していた物語であった。
一番大きな疑問だったのは、カンナが走ることをキッパリやめて手首に巻いたブレスレットを引きちぎってしまう重要な出来事。シロちゃんと夜叉は消え、ゆっくりと流れていた時が動き出し激しい雨が叩きつける。全てを投げ出したカンナは無気力になり放心状態。
物語に揺さぶりをかける凄く重要なシーンで、カンナが今後どうやって復活していくかが、更なる最重要ポイントなのだ。
呆然と雨の中を歩くカンナだったが、そこで「幼い頃の自分と母」を目撃する。そして「私、走ることが好きだ!!」と急に大復活を遂げるのである。
「なんで??」おいおい、どうした?一体何があって「幼い頃の自分と母」を目撃出来たんだ?
意味不明の謎である。「神様を扱った不思議な作品だから」という理由であれば、物語が雑だと指摘さても仕方あるまい。
これはどうでもいい疑問だが、「カンナはどうやって家に帰ったんだろう?」と思った。出雲に向かって走るのはイイが、目的達成後に走って帰るわけでもないだろう。気になる~。
神社仏閣等扱っているテーマは好みではあるし、出雲大社にも行ってみたい願望があるので興味はあったが、途中で「どこかの宗教映画」を観させられている気分になった。
信者を勧誘したいのなら、もっと丁寧に作った方が良かった、といったところで「カット、カット」。
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