三島由紀夫の自決する日までを描いた『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を観たのだ。
『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 興味深いが難しい題材。 史実をどう描くか? 監督:若松孝二 出演:井浦新 満島真之介 寺島しのぶ |
1970年11月25日、防衛庁内での割腹自決へと至るまでの三島由紀夫と私兵的団体「楯の会」の若者たちの物語を映画化。
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』『キャタピラー』の若松孝二が監督。
本作のために芸名をARATAから本名に戻した井浦新が、三島由紀夫を演じる。
『キャタピラー』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した寺島しのぶ、『極道めし』の永岡佑ら、実力派から注目株をキャストに揃えた。
2011年製作/119分/日本
配給:若松プロダクション、スコーレ
文豪として世界からも高い評価を得ていた三島由紀夫(井浦新)は、学生運動が全盛を極めている中で、民族派の若者たちを集めて民兵組織「楯の会」を結成。
有事が起きた場合には自衛隊と共に決起できるようにと訓練を行っていたが、自衛隊には能動的に出動する機会も権利もなく警察権力の前に自衛隊は出動の機会すらないことで、「楯の会」の若者たちは落胆と不満を抱えていく。
苛立ちは抑えられないところまでに達して、彼らは日本のみならず、世界中をも震撼させる大事件を起こす。
さて、先日ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』を観て、三島由紀夫に多大なる興味を抱き、三島由紀夫関連の動画を観たり著書を購入したりしている流れから本作を観た。
本作はドキュメンタリーではなく、ノンフィクション映画として役者を起用して作られているので、また違った表現手法での三島由紀夫に迫る真実として興味深い。
冒頭で政治家の浅沼稲次郎が演説中に17歳の右翼の少年に暗殺されるショッキングな実際の映像が流れ、驚いた。
だがショッキング映像を冒頭で流すことは正しかったのだろうか?と疑問が残る。これから映画を通して三島由紀夫の自決に至るまでを観ていくに当たって、実際の映像による浅沼稲次郎の暗殺シーンの方がショックが大き過ぎるのではないか。
本作では、三島由紀夫の自決シーンこそが最大のショックであらなければならない。
三島由紀夫を演じた井浦新は好演していたように思えるが、やはり三島由紀夫の存在感を表現するのは厳しい。顔が似ていないという致命的な点に加え、肉体も追いついていなかった。
流石に三島由紀夫ばりの強靭な肉体を作り上げるには苦しいが、説得力に欠けてしまうのは事実なのだ。
三島由紀夫の濃い顔に対して、井浦新は薄く優しい顔をしている。
三島由紀夫の気迫を演じることは非常に難しいことは理解出来るし、他の役者で三島を演じれるような思い当たる人も浮かばない。
史実やノンフィクションを扱う時、いわゆる「原作」があるようなものなので、それをどう切り取って、どう繋げて、物語を見せていくかが重要である。
本作においては、やけに堅苦しさが目立ち、史実に想像を絡めながら物語を進めているだけで、作品自体の面白味がなかった。
三島由紀夫の自決シーンを描きたいがために作られた気がするが、前のめりにさせるような迫力がないのだ。
やはり冒頭の浅沼稲次郎暗殺シーンが一番ショッキングだったと言える。
三島由紀夫の物語を知るのには大変参考になったが、映画としての面白味はなかった。であれば、ドキュメンタリー映画を観た方が良い。
題材が難しかっただけに何とも言い難いが、更なる興味を抱いたことは事実なので、三島由紀夫関連のものに触れていきたいと思う、といったところで「カット、カット」。
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