ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』を観たのだ。
『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』 互いをリスペクトした討論会。 ユーモアも交えたカッコ良さ。 監督:豊島圭介 出演:三島由紀夫 芥正彦 木村修 |
作家・三島由紀夫と東大全共闘との1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた伝説の討論会に迫ったドキュメンタリー。
2019年に発見された三島由紀夫と東大全共闘による討論会のフィルムの原盤を修復。
当時の関係者や現代の文学者、ジャーナリストなどの証言を交えて全貌が明らかになる。
『森山中教習所』『ヒーローマニア 生活』の豊島圭介が監督。
三島の小説『豊饒の海』の舞台版に出演した東出昌大がナビゲーターを務める。
2020年製作/108分/G/日本
配給:ギャガ
1968年に大学の不正運営等に異を唱えた学生が団結して、学生運動は全国的な盛り上がりを見せた。
最も武闘派と謳われた東大全共闘を初めとした1000人を超える学生が集まる討論会が、1969年5月13日に行われた。
三島由紀夫は警視庁の警護の申し出を断り単身で討論会に臨み、2時間半に渡って学生たちと議論を戦わせた。
三島由紀夫について知識があるわけではなかったのだが、三島由紀夫という存在にはどこかしら興味があった。ドキュメンタリー映画として万人にも触れやすいカタチにしてくれたことによって、三島由紀夫たる人物を観てみようと思った。
武闘派と言われた東大全共闘1000人の前に、単身乗り込んで行った三島由紀夫の覚悟が凄い。その覚悟ととんでもない事件が起きてしまうのではないかとの緊張とは裏腹に、会場から笑い声が聴こえる等、相手の立場を尊重した討論会が行われていた。
「近代ゴリラ」と三島を揶揄したような似顔絵のポスターを見て笑っている三島由紀夫の懐の深さと人柄が見え、「立派な近代ゴリラになりたい」と自らユーモアを交えて話す三島由紀夫が格好良い。
思想は違っていても両者ともに「日本を良くしたい」想いは根底にあるわけで、三島由紀夫が言った「君たちの熱情は信じる」との言葉の表れが、彼らを頭ごなしに否定せず尊重していることを証明している。
また司会を務めた全共闘の学生が敵対する三島を、うっかり「三島先生」と呼んでしまったことにも内なる心の表れが見える。「その辺の教授よりかは遥かに三島さんの方が先生と呼ぶに相応しい」と続けて弁明するのだ。
東大全共闘随一の論客の芥正彦が、三島が咥えた煙草に火を点けてあげる名場面こそが、互いのリスペクトを感じさせてくれる。
芥正彦が赤ん坊を抱きながら三島と討論を白熱する姿の異様な光景。煙草を手に赤ん坊を抱え、三島の真横で論ずる姿にカッコ良さと色気があった。
暴力ではなく言葉で相手と向き合うために三島由紀夫は全共闘の「熱情を信じて」ユーモアを交え、芥正彦は暴力とは真逆にいる赤ん坊を抱え、討論会の檀上に立ったのである。
討論の内容は小難しく全てを理解出来なかったが、三島由紀夫や全共闘について詳しく知りたいと思えた。
50年後の芥正彦も尖がったままのカッコ良さがあって、彼のインタビューをもっと聴いてみたいとの欲求に駆られる。
ショックだったのは、画面に映る44歳の三島由紀夫が今の自分と同い年であることだ。討論会の翌年に三島は自決するわけだが、三島由紀夫の圧倒的カリスマ性と懸命に生きた人生の濃さを前に、自分が恥ずかしくなって仕方ない。
これから三島由紀夫に関連する映画や書物等にも触れていこう、と思ったところで「カット、カット」。
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