上野の森美術館『ゴッホ展』を見に行ってきたのだ。
なかなか楽しみにしていた『ゴッホ展』であったが、いささか消化不良であった。
ゴッホといえば、やはり代表作である「ひまわり」や「自画像」「夜のカフェテラス」「オーヴェールの教会」「星月夜」「カラスのいる麦畑」など、誰もが何かしらで目にした事はあるだろう作品を見たかったのである。
これらの何点かが並んでいたのなら、そりゃあ大満足だし言うこともない。代表作品を日本で展示することも確かに大変であろうとは思うが、『ゴッホ展』を期待して見に来ただけに、物足りなかったのは事実なのだ。
さすがの『ゴッホ展』ということもあり、大盛況で混雑していた。作品を間近でゆっくり見ることも困難であったが、それは承知の上である。
代表作である「タンギー爺さん」も確かに展示されていた。僕が見たかった、「タンギー爺さん」ではないが。
「自画像」も展示されていたが、迫力ある「自画像」ではなかった。
ポスターでも大きく扱われている「糸杉」が展示されていたことが救いであった。
展示された作品の中でも「糸杉」は異様な存在感を放っていて、絵から強い息吹を感じるのだ。
実物の絵は近寄って見ると絵の具の厚塗りが激しい。
草も木も葉も山も空も雲も、炎のようにけたたましく、うねりを上げて渦巻いている。ゴッホの筆使いの荒々しさに恐ろしいほどの狂気を感じた。
ゴッホの作品を堪能する『ゴッホ展』としては、あくまで個人的な感想ではあるが正直物足りなかった。
好きなミュージシャンのライブに行って代表曲を全然歌ってくれなかったら、物足りない。皆が知っている曲を歌うから盛り上がるのものなのだ。
今回の『ゴッホ展』では代表作の展示は少ないものの、展示構成は工夫されている。ゴッホの絵の具を厚塗りした激しく渦巻くタッチに至るまでの過程をわかりやすく見せている。
第1部ではハーグ派の作品を展示していて、ゴッホの他にハーグ派の画家たちの作品も展示されている。
第2部は印象派で構成されており、ゴッホの他にモネやルノワールなどの作品も多く展示されている。
構成などには工夫をしていたが、やはりもっとゴッホを見たかったというのは否めない。
他の画家たちの絵で無理矢理、隙間を埋めた感がある。
好きなミュージシャンのライブに行ったら、途中で違うミュージシャンがゲストで何人か出てきちゃうみたいな。それはそれで盛り上がる要素だが、好きなミュージシャンだけで堪能したい。
ゴッホの激しい厚塗りのタッチは、平面でなく、実際に実物を目の前にして立体的に見るのがイイ。
ゴッホの作品を目にするチャンスは少ないので、『ゴッホ展』に行くのは悪くはない。
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