又吉直樹さんの二作目の小説『劇場』の実写映画化作品を観た。
『劇場』 主人公の永田にイライラ。 ラストの演出は素晴らしい。 監督:行定勲 出演:山﨑賢人 松岡茉優 寛一郎 |
『火花』で芥川賞を受賞した又吉直樹の2作目となる同名小説を、行定勲監督のメガホンで映画化。
劇場
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主演・山崎賢人、ヒロイン・松岡茉優。
2020年製作/136分/G/日本
配給:吉本興業
中学からの友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を務める永田(山崎賢人)。
永田の劇団は上演ごとに酷評され客足も伸びず、劇団員たちも永田を見放して、理想と現実のはざまで葛藤していた。
彼はある日、自分と同じスニーカーを履いていた沙希(松岡茉優)に思わず声をかけて、戸惑いながらも永田を放っておけない沙希は一緒に喫茶店に入る。
そして付き合うことになった二人は、沙希の部屋で一緒に暮らし始めた・・・。
僕は又吉さんの『劇場』の小説を読みたくて当時、文芸誌「新潮」で掲載された号を真っ先に購入したのであるが、結局冒頭数ページを読んで終わり、「読もう読もう」と思いながら映画『劇場』を先に観ることになった。
前作『火花』の時もNetflixのドラマ版を先に観てから小説を読んだので、まぁいいだろう。
映画を観ていて、単純に主人公である永田を「嫌いやわぁ~」と思って観ていた。
髪の毛を無造作にしてヒゲを生やしてみたところで永田役が山崎賢人では、ちょっとカッコ良すぎやしないだろうか。
むしろ、いつもの山崎賢人よりもカッコイイのである。
永田は本当にどうしようもないヤツ。顔だけ良くて、かなりのクズ野郎。
沙希ちゃんの部屋に転がり込んで「光熱費」さえ払ってあげないクズ野郎。
観ていてイライラしてくるのである。
「他の人の演劇を褒めると怒る」「クリントイーストウッドを褒めても怒る」エンタメを作る人間にとっては必要な要素ではあるかもしれないが、それを紗希ちゃんに嫉妬して怒り狂うのは違うだろう。
永田自身が紗希ちゃんを毎日笑わせ続けて、そのうえで嫉妬するなら理解出来るが、自分は散々泣かせておいて他人のエンタメに嫉妬するのは恐怖政治である。もうずっと笑顔すら見せれず、エンタメを我慢して生きていかなければならないのか。
紗希ちゃんが面白いと感じたものを永田が一緒に会話してあげればいいではないか。二人で見つけた面白いものを、二人で話すことが出来たら何と素晴らしいことだろうか。
エンタメに関しての恐怖政治を紗希ちゃんに味わせつつ、自分の気に入らないことがあったら部屋のモノを投げつけてキレ出すという永田に、僕のガマンは耐えられないのであった。
又吉さんの小説では、この辺の永田の心情が、丁寧に書き込まれていることを願う。
映画内でも永田によるナレーションで心情を語っていたが、「永田が嫌い過ぎて」僕には伝わってこない。
永田の鬱屈なんて、どーでもいいのだ。「てめぇ、紗希ちゃんの光熱費払って、美味しいご飯でもご馳走してやれよ」と思う。
面白い人というのは「気配りが出来る人」だと僕は思っている。
例えば街の中で平気で空き缶のポイ捨てをする人には面白いことは出来ない。そんな無神経なヤツが相手を笑わせることは出来ないのだ。
永田は残念ながら自己中心的で、相手を面白くさせようとする気配りが出来ないヤツである。
クズの永田とは対極に、紗希ちゃんは紗希ちゃんでブリッ子が強め。
こんなに性格のイイ子いないだろ。天使じゃね~んだから。
最後に紗希ちゃんが金属バットで永田を殴打するというシーンがあれば最高であったが、終始イイ子であった。
しかし、この『劇場』ラストの演出が凄く良かった。ラスト5分位であろうか。非常に良い演出で、僕の怒りも和らいだ。
『劇場』は僕にとって精神衛生上良くない映画であったが、ラストの演出を観れただけでも良かった、といったところで「カット、カット」。
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