楽しみにしていた葛飾北斎の映画を観た。
『HOKUSAI』 誰にも感情移入出来ず。 青年期から老年期を二時間で描ききれない。 監督:橋本一 出演:柳楽優弥, 田中泯, 玉木 宏, 瀧本美織, 津田寛治 |
柳楽優弥と田中泯のW主演で「富嶽三十六景」など生涯を通して3万点以上の作品を描き残したといわれる江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の知られざる生涯を映画化。
青年期の北斎を柳楽、老年期の北斎を田中が演じ、重三郎役を阿部寛、人気戯作者・柳亭種彦役を永山瑛太、歌麿役を玉木宏で共演する。
『探偵はBARにいる』シリーズ『相棒』シリーズの橋本一が監督。
2020年製作/129分/G/日本
配給:S・D・P
町人文化が華やぐ江戸の町の片隅で貧乏絵師の勝川春朗(柳楽優弥)は、不作法な素行で師匠に破門されたが、後の葛飾北斎となるこの男の才能を見いだしたのが、喜多川歌麿、東洲斎写楽を世に出した希代の版元・蔦屋重三郎(阿部寛)だった。
重三郎の後押しにより、その才能を開花させた北斎は、彼独自の革新的な絵を次々と生み出して当代随一の人気絵師となるが、次第に幕府の反感を招くこととなってしまう。
当初は2020年公開予定であったがコロナの影響により公開は2021年になった。
葛飾北斎の作品を拝みに東京の墨田区にある[すみだ北斎美術館]や長野県の小布施にある[信州小布施 北斎館]にも伺った。
劇場公開前から楽しみにしていた本作であったが、劇場公開時は謎の倦怠感に襲われて映画を観ることも億劫であったため映画館に足を運ぶことが出来なかったのである。
ようやく[U-NEXT]の配信で本作を観ることが実現したが、結果は期待ハズレと言ったところだろう。
北斎という題材を描くにあたって、映像表現はやや凝っていて芸術性を意識して撮られていたことは理解出来るが、登場人物の人間描写があまりにも大雑把で誰にも感情移入することが出来ない。
喜多川歌麿然り、謎の絵師ともまで言われる写楽の扱いの適当さにガッカリである。
魅力的な絵師に見えないどころか、本来ワクワクする彼らの登場に何の感情も動かないのだ。
名プロデューサーである蔦屋重三郎役の阿部寛は、まんま阿部寛であった。
北斎の娘お栄も永山瑛太が演じる種彦も、どうにも魅力的ではなく感情移入出来ない。
確かに青年期から老年期の北斎を二時間の物語に収めなきゃいけないので、大雑把な出来事を要所要所に散りばめるだけになり、深く描くことは難しかったのかもしれない。
結局、本作の一番の見どころは北斎の老年期を演じる田中泯さんの顔芸を楽しむしかない。
突風に吹かれる北斎。
雨に打たれる北斎。
映像表現はなかなか楽しいものがあったが、北斎の生き様や作品に取り組む背景をもっと深堀りしてくれていたら、北斎映画をもっと楽しめたのではないだろうか。
楽しみにしていた北斎映画であっただけに僕的には残念であった、といったところで「カット、カット」。
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