昭和最大の未解決事件をモチーフにした『罪の声』を観た。
『罪の声』 「声」から広がる人間ドラマ。 フィクションが生むリアリティー。 監督:土井裕泰 出演:小栗旬 星野源 阿部純子 |
実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフにした塩田武士の小説を映画化。
ミステリー小説『罪の声』は第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た。
『罪の声』
塩田武士 (著) |
新聞記者の阿久津を小栗旬、もう1人の主人公となる曽根を星野源が演じる。
『麒麟の翼 劇場版・新参者』『映画 ビリギャル』の土井裕泰が監督。
ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』などの野木亜紀子が脚本。
第44回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。
2020年製作/142分/G/日本
配給:東宝
平成が終わろうとしている頃に新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれる。
30年以上前の事件の真相を求め、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた阿久津は、犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用していた件が、どうしても気になっていた。
一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、父の遺品の中にカセットテープを見つけて、何となくテープを再生してみると、幼い頃の自分の声が聞こえてくる。
だがその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた昭和最大の未解決事件の犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。
グリコ森永事件をモチーフにして作られた本作では、ギンガと萬堂という架空の大手製菓メーカーという設定で映画化されているが、事件の内容はやはりグリコ森永事件そのものである。
僕が子供の頃にニュースで取り上げられていたことは記憶しているが、詳細は知らず、「キツネ目の男」が容疑者であることと未解決事件のままであることぐらいしか知らない。
小説を映画化したものだが、著者はグリコ森永事件について相当熱心に調べたという。
各事件の発生日時や犯人による脅迫状・挑戦状、事件の報道はほぼ史実通りに描かれいるのだ。
子供の声を使って身代金の要求がされており、録音されたカセットテープが自分の家から発見されて、その声が自分だった場合のショックは計り知れない。
グリコ森永事件の真相を辿る仮説を、「子供の声」に着目して物語を作り上げていった発想が面白い。
その声から、多くの人たちとの人間ドラマが波紋のように広がっていくのだ。
小栗旬と星野源との別々の立場からの事件の真相についての歩みが、見事に交差する。
事件に加担してしまった星野源を含めた3人の子供たちの行方がドラマティックに描写されて、グリコ森永事件の謎をただ解明していくだけではない、胸を打つ物語を織り交ぜながら展開していく点は秀逸である。
中でも宇野祥平さんの佇まい、演技力が抜群で、宇野祥平さんをキャスティングしたことによって映画の持つ説得力が格段に増したことは間違いない。
犯行に子供を巻き込んだことによって、悲惨な運命を辿らせてしまった重圧がのしかかる。
グリコ森永事件の真相を描いた仮説の物語ではあるが、登場人物それぞれの人間ドラマをしっかりと見せていったことにより、フィクションであるはずの物語が色濃くリアリティーを生んだ。
星野源が発見してしまったカセットテープについては、「バレへんように処分しとけよ!」と当時の大人たちにツッコミを入れたくなった、ってなところで「カット、カット」。
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