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映画『トウキョウソナタ』ネタバレ・あらすじ・感想。

沢清監督の『トウキョウソナタ』を観たのだ。

『トウキョウソナタ』
家族の絆と抱える虚しさと不安定な食卓。
ピアノの美しい旋律が家族をひとつにする。
監督:黒沢 清
出演:香川照之, 小泉今日子, 役所広司

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解説

 
黒沢清監督が、東京に暮らす普通の家庭が辿る崩壊と再生を描いたホームドラマ。


主演には、香川照之、小泉今日子。

第61回カンヌ映画祭で、ある視点部門審査員賞を受賞。

2008年製作/119分/日本・オランダ・香港合作
配給:ピックス

 

あらすじ

 
平凡なサラリーマンの佐々木竜平(香川照之)は、ある日突然、長年勤め上げた会社からリストラを宣告されてしまい途方に暮れる

世の中に対して懐疑的な心を持っている長男・貴(小柳友)は家族から距離を置くようになり、一家のまとめ役である妻・恵(小泉今日子)にも異変が起き始めていく。

 

感想

 
家族内での権威を守るためなのか、リストラされたことを家族に言い出せないまま会社に出勤したフリをする香川照之。

感情を爆発させることなく抑えたまま、現状を受け入れきれないまま、静かに受け入れていく。

だが家庭内では相変わらず息子たちに高圧的な態度で、父親としての威厳を保とうとするが、そのハリボテな権威の虚しさと漂う哀愁が、切ない空気感に包まれていってしまう。

小泉今日子は家庭を大事に想うがあまり、調和のとれない家族に、どこかしら冷めた自分に支配されそうになっている。

幾度となく登場する家族での食卓が不自然な構図で映し出され、黙々と食べる家族が顔を合わせながらも、それぞれ違った方向を向いてバラバラになってしまいそうな不安定さを感じるのだ。

香川照之や役所広司という演技達者な二人と、美しいながらも生活に疲れてしまった感じの主婦を小泉今日子が丁度イイ塩梅で演じている。

家族の理想が少しずつ崩れかけていく中で、押しつぶされそうな現実に戸惑いながら、それでもその先に手を伸ばそうと前へと進んでいく。

香川照之は「やり直したい!」と叫び、小泉今日子は海に身を沈めようとするも、命の危険にさらした危険人物であるはずの役所広司によって命を救われて、生きる道を選択する。

ラスト、息子が弾くピアノは、まるで不協和音になっていた家族をひとつにするかのように、美しい旋律を奏でるのである。

演奏を終えた息子の前に歩み寄る夫婦、暴力で制圧しようとしていた香川照之の手の平は、そっと息子の頭を優しく撫でる。

崩壊寸前だった家族が寄り添いながら共に歩いていくのだ。

ピアノ演奏の後だったこともあってか、エンデイングロールが流れる中での音楽はない。

黒沢清監督の絶妙な演出が、最後の最後まで噛みしめながら味を堪能出来るのである、といったところで「カット、カット」。

 

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