漫画で描いた殺人事件を模倣する殺人犯が現れるという『キャラクター』を観たのだ。
『キャラクター』 山城に潜む凶暴性。 考察が拡がる作品。 監督:永井聡 出演:菅田将暉 Fukase(SEKAI NO OWARI) 高畑充希 |
菅田将暉と「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukaseの共演によるダークエンタテインメント。
『20世紀少年』等で数多くの浦沢直樹作品にストーリー共同制作者として携わってきた長崎尚志が脚本。
『世界から猫が消えたなら』『帝一の國』の永井聡が監督を務める。
主人公・山城役を菅田、殺人鬼・両角役をFukaseが演じる。
2021年製作/125分/PG12/日本
配給:東宝
売れっ子漫画家を夢見る山城圭吾(菅田将暉)は高い画力を評価されるが、リアルな悪役キャラクターを描くことが出来ずにアシスタント生活を送っていた。
ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かけた山城は、住宅街の中にある一軒家で四人家族の殺人現場と犯人を目撃してしまう。
第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をついて、犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画『34(さんじゅうし)』を描き始める。
本物の「悪」を描いた漫画は異例の大ヒットをして山城は売れっ子漫画家となり、恋人の夏美(高畑充希)とも結婚する。
しかし漫画『34』で描かれた物語を模したような、四人家族が次々と狙われる事件が続く。
そんな中、山城の前に犯人の男が姿を現す・・・。
絵は上手いが魅力的な「キャラクター」が描けずに漫画家になれない菅田将暉演じる山城が、凄惨な殺人現場に遭遇して犯人の姿を目撃したことにより、本来なら思い出したくもないトラウマ級の体験を漫画の中に活かしていく狂人性がヤバイ。
人気漫画家になりたい純粋な想いと優しさを持つ山城だったが、憑りつかれたように一心不乱に漫画を描き殴る様は鬼気迫るものがあった。
山城の描く漫画『34(さんじゅうし)』の殺人を模倣する「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukase演じる両角は、戸籍もなく本名もわからない「キャラクター」である。
魅力的な「キャラクター」を描けなかった山城が両角との出逢いによって魅力的な「キャラクター」を描けるようになり、戸籍もなく身寄りのない両角も山城の描く漫画によって魅力的な「キャラクター」へと変貌していく。
山城と両角は最初対極にいるような存在であったが、二人の関係は酷似しているのだ。
山城と両角の対決シーンでは内なる凶暴性が目覚めたかのように、山城は両角を殺害しようとすることを楽しんでいる姿が映し出された。
倒れ込んだ二人が折り重なるシーンと、ラストの「僕は誰ですか?」との問いに両角と山城が重なり合う演出を観ていると、「もしかしたら、こいつらも双子なの?」と勘繰ってしまう。
双子ほど顔は似ていないが、兄弟と言われても似てなくはない。
山城の家族は父親と再婚相手の女性と娘で構成されているが、もしかしたら山城に兄か?弟?がいた事実が隠されていたりするのではないか。
『キャラクター』は、各々が色んな角度と解釈で考察出来る謎に溢れた鑑賞後も楽しめる作品だ。
小栗旬演じる清田刑事が殺害されるシーンが非常に怖かった。
振り返ったら両角がいて、更に振り返ったらナイフを持った辺見がいて、こんなに呆気なく人の命が奪われてしまうのだと怖くなる。
山城を襲った時の両角も怖かった。夏美まで刺された時には恐怖で絶望した。
それにしても警察が到着するのが遅すぎた。何やってたの?あまりにも無能過ぎる。
両角が白昼堂々と殺人を決行するが、全然警察が捕まえきれないのは何なのか?無能過ぎる。
警察がもっと優秀だったら早期解決出来たのかもしれない。早期解決したら映画にならないので、無能である必要はあるが。
両角の台詞で「殺人をするのって疲れるんだよ。二日間ぐらい動けないんだ」というようなことを言っていたが、イイ台詞だと思った。
スポーツでも格闘技でも本気でやれば疲れるに決まっている。人と人の喧嘩だって疲れる。
必死に抵抗してくる相手を四人も殺害するのは相当疲れるはず。
『キャラクター』は一度観ただけでは彼らのバックボーン等を推測して考察し切れず、再度観たくなる作品である。
見応えがあり楽しめる作品であった、といったところで「カット、カット」。
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