先日、遅ればせながら『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を観に行ってきたのだ。
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』 「岸部露伴の過去」と「最も黒い絵の呪い」。 オカルト要素満載の内容。 監督:渡辺一貴 出演:高橋一生 , 飯豊まりえ , 長尾謙杜 , 安藤政信 , 木村文乃 |
高橋一生主演のNHKで放送されたテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』の劇場版。
原作は荒木飛呂彦のコミック『岸部露伴 ルーヴルへ行く』。
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
荒木 飛呂彦 (著) |
出演は、露伴役の高橋一生、担当編集者・泉京香役の飯豊まりえがドラマ版から続投、木村文乃、長尾謙杜、安藤政信、美波らが顔を揃える。
監督・渡辺一貴、脚本・小林靖子、音楽・菊地成孔、人物デザイン監修・柘植伊佐夫と、ドラマ版のスタッフが再結集。
2023年製作/118分/G/日本
配給:アスミック・エース
相手のことを本にする特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を持つ漫画家・岸辺露伴(高橋一生)は、青年時代にかつて淡い思いを抱いていたある女性から聞いた「この世で最も黒く、邪悪な絵」の存在を思い出す。
その絵がフランスのルーブル美術館に所蔵されていることを知った彼はフランスを訪れるが、美術館職員ですら「黒い絵」の存在を知らずデータベースでヒットした保管場所は、既に使用されていない地下倉庫「Z-13倉庫」であった。
NHKのドラマが好評を呼びシリーズ化され、遂には劇場版まで作られることになった本作。
あの何故か第一章しか制作されず続編に関しては何事もなかったかのように無視を決め込んでいる、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』とは全然違う。
「岸部露伴」のドラマシリーズを全話観ていたので劇場版がどういったカタチで制作されているのか気になり今回劇場に足を運んだ。そう「動かない」はずのタイトルとは裏腹に「動いて」観に行くことになった。
「ルーヴルへ行く」という映画化には持ってこいの荒木飛呂彦さんの原作が上手い具合に出版されており、今回良きタイミングで功を奏したのだ。
ドラマシリーズでも気を遣っていたであろう撮影ロケ地。世界観を崩さぬように物語に合ったロケ地で撮影され、日本の風景を奇妙に撮っている。
今回はフランスのパリでのルーヴル美術館が物語のメインになるわけなので、「岸部露伴」の世界観に非常に合っているではないか。
否が応でもパリでのロケが注目視されると思うが、その殆どがルーヴル美術館でのロケだけで完結させているのは非常に面白い。
決して派手にパリの街並みを暴れ回ろうという豪華さに惑わされず、ルーヴル美術館でちょこっと撮影しただけである。
全編をパリでロケした『エロティックな関係』とは違う。
予算的な関連もあるとは考えられるが、ルーヴル美術館のみで余計な派手さを取り込まずに物語を最優先に考え撮影されたのは間違いない。
あくまで「ルーヴル美術館の地下倉庫」と銘打って、日本で撮影しちゃえば良いのだ。
まぁ、そんなことはどうでもイイじゃないか。本題に触れよう。
本作の注目すべき点は「岸部露伴の過去」と「最も黒い絵の呪い」ではないか。いや、他にも注目すべき点があるかもしれないが、僕が感じたのはこの二つ。
今までのドラマでは「岸部露伴の過去」に触れることはなかった。しかし本作では岸部露伴の過去と現在を交錯させながら物語が進行していく。
岸部露伴の少年時代にフォーカスするならまだしも、青年期を描くには役者のキャスティングが非常に難しい。
現に高橋一生の青年期と思うには少しばかりの違和感。青年期を演じた長尾謙杜に一切の不備はないが、高橋一生の青年期には見えない。
顔も違うように声も語り口調も違う。
仮に長尾謙杜と友人になり、数十年後に高橋一生の風貌で目の前に現れても「お~、久しぶり~!」とはならない。別人だからだ。
それ程までに岸部露伴の青年期のキャスティングは難しいが、長尾謙杜の透明感のある岸部露伴も中々良かった。
「岸部露伴ってクセが強くて性格が曲がっている」のに、「青年期はこんなに純朴だったのか」と驚く程に別人格。「一体、この後の人生で何があってん?」と気になってしまう。
そして本作は岸部露伴が「最も黒い絵」に翻弄されていくことでルーヴルまで飛ぶことになる。
ルーヴル美術館で岸部露伴が『モナ・リザ』をバックに立っているショットが良い。彼の興味は『モナ・リザ』ではなく「最も黒い絵」。
ドラマシリーズでは必ず能力者と対峙してバトルを繰り広げてきたが、本作では能力者は現れず「最も黒い絵の呪い」と対峙してバトルする。
最も黒い絵に隠された秘密と岸部露伴が青年期に出会った謎の女性との繋がりが明らかになっていく。
木村文乃が演じた謎の女性の奈々瀬は「岸部露伴の先祖?」という繋がりもあり、奈々瀬の夫である「山村仁左右衛門」を高橋一生が演じた理由もわかった。
本作は、怨念、呪い、死霊等を用いた非常にオカルト要素満載の内容であった。
編集者の泉が最も黒い絵を見ても何の呪いも発動しなかったオチも良い。
さて「岸部露伴」シリーズの次回はドラマなのか劇場版なのか、どういったカタチで観られるのだろうか、といったところで「カット、カット」。
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