海外メディアで大絶賛の『アド・アストラ』、ブラピ史上最高の演技とも謳われて、正直誰しもが期待した映画であろう。
確かに宇宙を表現した映像は凄く良かったし、ブラピの抑えた演技ももちろん良かった。
しかし僕は大絶賛とはならない。期待ハズレの不完全燃焼映画であった。
『アド・アストラ』 パパをたずねて43億キロ。 映像美とブラピの演技は素晴らしいが。 監督:ジェームズ・グレイ 出演:ブラッド・ピット,トミー・リー・ジョーンズ,ルース・ネッガ,リブ・タイラー Amazon |
ブラッド・ピット主演でSF映画となれば、観る人の動機付けとしては十分過ぎるだろう。
こんな眼差しで見つめられた日にゃあ、問答無用で観るしかない。
アド・アストラとは「星の彼方へ」という意味である。
ブラッド・ピットは、太陽系の遥か彼方で消息不明になった父親を捜しに旅立つ宇宙飛行士のロイを演じる。
ロイの父親役であるクリフォードを演じるのは、トミー・リー・ジョーンズ。
監督は『リトル・オデッサ』でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞して、カンヌ国際映画祭の常連であるジェームス・グレイ監督。
申し分ないメンツが揃った本作でありながら、しかもブラッド・ピット史上最高の演技と謳われて文句なしに期待値が高まるばかりだぜ。
第76回ベネチア国際映画祭で初披露されて、海外メディアからも大絶賛の声が殺到だとか。
米The Guardianが「スペース・オペラの最高傑作」、米The Wrapが「ブラッド・ピット史上最高の演技」と評した。また米The Hollywood Reporterは「ストーリーも演技も非の打ちどころのない完璧な作品だ」と讃えている。
本作のアイデアにジェームズ・グレイ監督は『2001年宇宙の旅』や『地獄の黙示録』の原作となった小説「闇の奥」を挙げていてる。特に『2001年宇宙の旅』は監督にとって「5本の指に入る」と言うほど敬愛する映画であり、本作にあたっても「考えずにはいられなかった」と言っているのだ。
2019年製作/123分/G/アメリカ
原題:Ad Astra
配給:20世紀フォックス映画
ロイ・マグブライドは、地球外知的生命体の探求に人生を捧げた英雄の父の姿を見て育った。そして自身も宇宙飛行士の仕事を選んだのだ。
しかし、その父は地球外生命体の探索に出た船に乗ってから 16年後、43億キロ離れた太陽系の遥か彼方の海王星付近で消息を絶ってしまう。
時は流れてエリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実を聞かされてしまう。
父が進めていた「リマ計画」は、太陽系を滅ぼしかねない危険なものであることがわかり、ロイは軍の依頼を受けて父を捜しに宇宙へと旅立つことになるのだが・・・。
ストーリーの予備知識がないまま本作を観ることにしたのだが、序盤からの宇宙エレベーターでのハプニングに「おっと面白そうだぜ」と思った。
期待値が膨らんだのだが、残念ながらいかなるハプニングが起きても心拍数80を超えたことがない冷静沈着なブラピのように、僕の心拍数もエンディングを迎えても上がることはなかった。
エリートであるブラピ演じるロイという宇宙飛行士は、シリアスな表情を浮かべながら、心拍数が上がらずとも心の中は常に葛藤している。
そんな繊細な心理状況と壮大な宇宙との対比が面白味のひとつでもある。
この映画のストーリーを把握していないと、途中途中で「どんな映画やねん!」と迷宮の中に迷わされることとなるので要注意。
月面では月面走行車に乗っていると、何故だか意味不明な盗賊が出現する。銃で撃ち合い、車がクラッシュしたりと、「月を舞台にした『マッド・マックス』でも始まったのか」と思考を操作されて、壮大なSFアクションが始まるのかと待ち受けていたら、別に何も始まりゃしないのであった。
それから実験動物のサルが凶暴化して人間を襲うシーンがある。宇宙船内で凶暴化したサルに人間が襲われるパニック映画が始まるのかと思いきや、また何も始まらなかった。ここは結構面白くて個人的に好きなシーンでもある。
でも忘れちゃいけないのが、父の存在である。物語上、行方不明になった父だが、観ているこっちも父の存在を忘れてしまうとこだった。
父が生きていることを知ったロイは、初めて自分の感情を露わにする。そのことによって任務遂行は不適格と見なされてしまうのだが、暴挙に出て打ちあがるロケットに飛び乗ってしまうのだから宇宙版『ミッション・イン・ポッシブル』でも始まっちゃうのかと思っちまった。
父との再会だって全然感動的なんかじゃありゃしない。せめて別離のシーンは感動的なのかと思いきや、バカバカしくて全然感動しない。
大体「トミー・リー・ジョーンズが宇宙人だったはずじゃないか!」と脳裏をよぎるのであった。
映画の内容は期待ハズレ。
良いところをあげるとしたら映像美だろう。内容はともかく映像だけでも一見の価値はあるかもしれない。映像の良さとブラピが主演ということで、何とか最後まで持たせてくれた映画ではなかろうか。
てなところで、「カット、カット」。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。