ハリウッドのアカデミー賞で7部門を席捲した「エブエブ」を観たのだ。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 映画そのものがマルチバース。 税務署で繰り広げられる家族の物語。 監督:ダニエル・クワン , ダニエル・シャイナート 出演:ミシェル・ヨー , ステファニー・スー , キー・ホイ・クァン |
カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を掛け合わせ、生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、カンフーマスターとなって世界を救うことになる姿を描いた異色アクションエンタテインメント。
『ムーンライト』『ミッドサマー』等のA24が製作。
『スイス・アーミー・マン』のコンビ、ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)が監督。
エヴリン役は『シャン・チー テン・リングスの伝説』『グリーン・デスティニー』のミシェル・ヨー。
1980年代に子役として『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』『グーニーズ』等で人気を博したキー・ホイ・クァンが、夫のウェイモンドを演じて本作で20年ぶりにハリウッドの劇場公開映画に復帰。
悪役ディアドラ役は『ハロウィン』シリーズのジェイミー・リー・カーティス。
第95回アカデミー賞、同年度最多の10部門11ノミネート。作品、監督、脚本、主演女優、助演男優、助演女優、編集の7部門を受賞。
2022年製作/139分/G/アメリカ
原題:Everything Everywhere All at Once
配給:ギャガ
エヴリン(ミシェル・ヨー)は優柔不断な夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と反抗期の娘、頑固な父と暮らしながら、破産寸前のコインランドリーを経営。
税金申告の締め切りが迫る中でエヴリンはウェイモンドに並行世界に連れて行かれ、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と驚きの使命を背負わされる。
カンフーマスターさながらの身体能力を手に入れたエヴリンは、全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がる。
マルチバースとカンフーを取り扱った内容は非常に興味深い。オカルトとカンフー好きの僕にとっては大好物だ。
しかも主演はミシェル・ヨーで、旦那役にキー・ホイ・クァンも出演している。
本作の優れた点は家族内の問題を解決するのと同時に、税務署で繰り広げられるワンシチュエーションにこだわった点だ。
マルチバースでは多彩なシチュエーションが出てくるが、実際は税務署とコインランドリーぐらい。
決して大それた物語ではなく主婦の日常生活の中で非日常が巻き起こり、「家族」から「宇宙」へと飛躍したマルチバースの世界観への振り幅の大きさが凄い。
本編では明言されていないのだが、ミシェル・ヨー演じるエヴリンはADHDを患わっている設定だという。また娘のジョイは「太り過ぎ」と指摘され、恋人は女の子のベッキーだ。エブリンの父親は痴呆で車椅子に乗り、様々なマイノリティの物語が本作には詰め込まれている。
そしてマイノリティは物語上だけではなく、アジア人の移民の中年女性を主演にした本作がアカデミー賞で7部門を受賞したのは異例なのだ。
先ず本作の設定を発想した時点で、異色な映像世界を楽しませてくれることが確約されたようなもの。
マルチバースを軸に繰り広げられるカンフーアクション、コメディー、アニメ、ラブストーリー、ヒューマンドラマを詰め込み、映画そのものがマルチバースのような感覚に陥っていく。
だが本作を楽しめたかどうかは賛否分かれるところではないか。あまりにもスピード良く目まぐるしい展開のマルチバースとクセのあるコメディーの波に上手くノれれば楽しいが、ノリきれなければ一体何を観ているのか途方に暮れそうである。
僕はといえば最初にマルチバースに飛んだ時点で見失った(早っ!!)。意味不明過ぎて「何のこっちゃ?」の連続。クリストファー・ノーランよりも難解だった。
まぁもう一度観れば大体把握出来そうな気もするが、それはマルチバースにいる別の自分にお任せしよう。
よくわからなかった「エブエブ」を観た、といったところで「カット、カット」。
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