日本の戦争映画はあまり期待できるものではなく、古臭い堅苦しさと残念なCGと、強引にクサい感動ドラマへ持ち込んでいくという先入観が僕にはあるのだが、『アルキメデスの大戦』はオープニングの映像だけで全てを払拭させてくれたのだった。
『アルキメデスの大戦』 オープニングのVFXに圧巻。 数学を武器にした論争も魅力的。 監督:山崎貴 出演:菅田将暉 舘ひろし 柄本佑 |
戦艦大和の建造をめぐって様々な謀略を描いた、「週刊ヤングマガジン」で連載している三田紀房が原作のコミックを菅田将暉主演、山崎貴監督によって映像化された。
舞台は1930年代の日本。日本と欧米の対立が激化している第二次世界大戦前、数学者の視点で戦艦大和の建造計画を食い止めようとする。
数学者を菅田将暉、山本五十六を舘ひろし、浜辺美波、柄本佑、笑福亭鶴瓶らが顔を揃える。
VFXで甦った戦艦大和の雄姿も大きな見どころである。
2019年製作/130分/G/日本
配給:東宝
昭和8年(1933年)、第2次世界大戦開戦前の日本は、欧米との対立を深めて軍拡路線を歩み始めた。
海軍省は世界最大の超大型戦艦大和を建造する計画を秘密裏に進めていたのだが、この計画に異を唱える海軍少将の山本五十六は、国家予算の無駄使いだと証明するために、元帝国大学の数学者である櫂に声をかける。
櫂は数学を偏愛し大の軍隊嫌いであるが、卓越した数学的能力をもって大和建造にかかる高額の費用を試算し、計画の裏でうごめく軍部の陰謀を暴いていく。
ちょっと驚いた。最近『空母いぶき』という日本の戦争映画を観た後もあって期待していなかったけど、レベルが全然違った。
オープニングからの戦艦大和でのVFXを使ったシーンは圧巻。日本でも、ここまでのリアルな映像が撮れるのかと驚いた。素晴らしく良かった。このオープニングだけでも観る価値アリ。
『ドラゴン桜』を描いた三田紀房漫画原作ということもあってか、数学を用いた第二次世界大戦前の戦艦大和をテーマにした物語が魅力的であった。
いつの時代も日本の腐った上層部が自分たちの利権のために動いていくのだが、数学を武器に立ち向かう菅田将暉が非常に面白い。
ただの正義感で熱くなって論争をぶつける戦争を扱った人間ドラマだとしたら凄くクサくなるものだけど、数学に憑りつかれた男が数学の学力を武器に論争していく姿は観ている者の知的好奇心もくすぐられていく。
菅田将暉が黒板に向かって長たらしい数式を書いてから説明するシーンを、ワンカットで誤魔化さないで見せたのも素晴らしかった。
菅田将暉という現代チックなビジュアルと堅苦しくない演技が、堅苦しいはずであろう映画を、堅苦しくなく観れたのも大きなプラスである。
迫力あるオープニングが出オチ感になることなく数学を用いた魅力的な物語を展開することで、最後まで楽しむことが出来た作品であった、ってなところで「カット、カット」。
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