ヤヴァい女、現る!
デビット・フィンチャー監督が描くサイコな「ヤヴァい女」。
怖さと面白さが相まった、問題提起を突き付けてくる映画である。
『ゴーン・ガール』 デビット・フィンチャー監督の一流の腕で描いた、 サイコな「ヤヴァい女」に震える。 監督:デビッド・フィンチャー 主演:ベン・アフレック,ロザムンド・パイク,ニール・パトリック・ハリス |
『セブン』『ソーシャル・ネットワーク』の鬼才デビッド・フィンチャー監督が、ギリアン・フリンの全米ベストセラー小説を映画化。
結婚5周年に突如姿を消した妻を捜す男。
警察の捜査やメディア報道に追い込まれて、さらに妻殺害の疑いを掛けられてしまう物語を描くスリラーである。
本作は実際に2002年のアメリカで起きた、妻が行方不明であると偽装して、実際は愛人のいた夫が殺害していた「スコット・ピーターソン事件」が元ネタになっているのだ。
オスカー受賞作『アルゴ』など監督業でも活躍するベン・アフレックが主演を務めて、妻には『アウトロー』などのロザムンド・パイクが扮する。
2014年製作/148分/R15+/アメリカ
原題:Gone Girl
配給:20世紀フォックス映画
ニックの妻エイミーが5回目の結婚記念日に突如、失踪。
誰もがうらやむ完璧な夫婦であった二人だが妻の失踪後、警察には嫌疑を掛けられて、メディアでは散々ニックが不利になるような妻殺害の容疑が報道されていく。
男性側のだらしなさはもちろんのことだが、この映画を観ると女性の「怖さ」、結婚生活の「怖さ」が否応なく襲い掛かってくる。
失踪した妻を探しているだけなのに、どんどん自分が妻殺害の疑いをかけられて、おまけに自分の不貞な行動も明るみになり、夫にとって「最悪のシナリオ」通りに物語は進んでいく。
じりじりと人間の本質に迫るようなデビッド・フィンチャー監督の描きたかったものとは何だったのか?
推理サスペンスとしては、かなり安直なものではあるし物語の途中であっけなくネタばらしをしていくので、推理的な要素を描きたかったわけではなく、もっと人間の本質の深いところを描きたかったのだろうと思った。
夫としてのヤバさ、妻としてのヤバさ、結婚生活のヤバさが露呈されて、いかに世間でいう幸せのカタチが薄っぺらいもので仮面をつけているものなのかを物語の中でも、また観ている者にとっても、夫婦の問題を鋭く突き付けてくるのである。
「この女ヤヴァい」と観ていて恐怖を覚えるのである。
しかし、この女もバチが当たる時は当たる。逃亡した先で、あるカップルの強盗に遭う。持っていたカネを奪われるわけだが、僕の中では疑問が残る。
この女にそんなことをしてタダで済むわけがない。
必ず復讐されるぜ!と実際のところ思うのだが、強盗カップルに関しては何の復讐もしない。ただカネを奪われて悔しくて落ち込んでいるだけである。
この女の弱点かもしれない。
男女の関係になる男にとってはサイコなほどに悪女になるが、そうでもない「やから」みたいな連中には手も足も出せずフツーに怯えている。
結局、利用するのは過去の男だったりする。男女の関係になった男には「ヤヴァい女」っぷりを発揮するのである。
あー、怖い。
「ヤヴァい女」っぷりはともかくとして、デビット・フィンチャー監督の監督としての映画作りの巧みさには敬服するばかりである。ということで、「カット、カット」。
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