ハリウッド映画版の『All You Need Is Kill』を観て、「こりゃ面白いわ」ということで、コミック版の『All You Need Is Kill』を読むことにした。
映画版との違いや共通点、描き方など、どういった感じなのか?を知りたかった。
元々の原作はラノベから始まったもので、日本のラノベ原作ものがハリウッドで映画化された話題作である。
All You Need Is Kill 桜坂洋 (著) |
小畑健が漫画を描いていて、その画力やカッコ良さは申し分ない。
ハリウッド映画版の舞台はトム・クルーズが主人公であることからしてもアメリカであったが、コミック版では日本人が主人公なので日本が舞台である。
コミック版も全2巻なので非常にサクサク読めてありがたい。
ラノベは全1巻、映画は2時間なので、コミック版も膨大な量になるわけではない。これが全20巻ならば読むのもしんどいが。
コミック版では主人公が目覚めるところから始まる。前日に「戦場で殺された夢」を見たと思っている。しかし次第に夢ではなくて、自分が経験したことのある現実であることに気付いていくのだ。
映画版はタイムループ設定であることが冒頭では語られない。映画の内容を全然知らないで観ていた僕は、物語の途中で「え?これタイムループものなの?」と言わば主人公と一緒の時点で気付いたのである。
コミック版のように冒頭からタイムループものであることを知ると、物語も理解しやすくなる。
やはり日本の漫画だなぁと思ったのは、凄く感傷的であったり、心理描写が切ない点である。戦場で戦い続けて何度も死を体験することによる主人公と女性兵士の関係。彼らは昨日今日出逢ったばかりだが、主人公は百何十日とその経験をしている。記憶は残っているわけだから、彼女に惹かれていくのは当然なのである。
主人公のケイジが「何周も死をループしている者」と知った時に、女性兵士であるリタが涙するシーンはグッとくる。「自分だけじゃなかった」という安堵感、「同じ境遇にいる仲間」に出逢った嬉しさという心からくる涙が、読者にも感情移入させるのだ。
しかしリタは「自分か?ケイジか?」どちらかが死ななければいけないという宿命も認識していて、「ケイジが生き残って、自分は死ぬ」という覚悟も一人で背負っている。
何度も「死」を経験しているのだから恐怖感はない。だけど、もう二度と目覚めることのない明日は哀しい。「一緒にいたい」人と「一緒にいられない」現実を受け入れるのは、あまりにも残酷である。
だけど元々は戦場で失っていた命ではあるから、目の前の「死」を受け入れるしかない。
小畑健の作画のカッコ良さと、全2巻で読める『All You Need Is Kill』は凄く良かったが、物語が終わってしまったことに関しては寂しさもあるものだ。
『All You Need Is Kill』 原作:竹内 良輔 漫画:小畑 健 |
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