史上最低のダメ総理が記憶を失ったことで訪れる変化。三谷幸喜最新作『記憶にございません!』を観た。
『記憶にございません!』 個人的なスキャンダル解決よりも、 「総理」の設定を活かした国の問題解決を。 監督:三谷幸喜 出演:中井貴一 ディーン・フジオカ 石田ゆり子 |
『ザ・マジックアワー』などの三谷幸喜がメガホンを取った長編映画監督8作目、記憶をなくした総理大臣が主人公の政界コメディー。
史上最低の支持率を叩き出した総理大臣を、三谷監督作『ステキな金縛り』などに出演してきた中井貴一が演じるほか、『海を駆ける』などのディーン・フジオカ、『マチネの終わりに』などの石田ゆり子、『体操しようよ』などの草刈正雄、『64-ロクヨン-』シリーズなどの佐藤浩市ら豪華キャストが顔をそろえる。
2019年製作/127分/G/日本
配給:東宝
国民からの支持率は過去最低で史上最悪のダメ総理と呼ばれた総理大臣の黒田啓介(中井貴一)は、ある日病院のベッドで目覚めるが、一切の記憶がない。
国政の混乱を避けるために記憶喪失になったことを国民や家族には知らせず、真実を知る3人の秘書官に支えられながら日々の公務をこなす中で、アメリカの大統領が来日することになる。
本作『記憶にございません!』は公開当時大ヒットしていたが、三谷幸喜監督は日本国民から絶大な信頼があるようだ。
僕個人の見解は、三谷幸喜監督の舞台やテレビドラマは非常に面白いが、映画はイマイチであるという認識なのだ。それでも三谷幸喜は好きな脚本家なので、今回も「観てみよう」という動機に繋がるのである。
三谷幸喜映画といえば豪華な役者陣がズラリと顔を揃えるのだが、それはいかがだろうか?豪華な役者陣にそれぞれ「薄っぺらい役」を与えて、笑えない「軽いボケ」をそれぞれの役者陣に演じさせる。次から次へと物語を場面転換することでドタバタ劇が繰り広げられるのは、本来面白いはずなのにノリに付いていけないのは、演劇のノリをスクリーンに落とし込んでいるからなのだろうか?
ここらで映画のキャストを無駄に豪華に揃えるのではなく、五人位に絞って構成させた方が三谷幸喜の本来の頭の良さが発揮出来るのではないか。
『記憶にございません!』はトータルで見れば「フツー」であったが、三谷幸喜という優秀な作家ならば「もっと面白い」を期待してしまうのだ。
史上最低の支持率である総理が記憶を失ったことで大いに変化して、良き総理になっていくという発想や物語性は面白いと思う。しかしもっと「大きな問題」や「大きなピンチ」が訪れて解決させていく総理の姿があれば良かった。ただのくだらない雑誌記事のスキャンダルや、国会中継で奥さんに呼びかけるシーンだけではパンチが弱い。ってか、あんな夫婦問題では感動に値しない。
個人的なくだらない問題の数々を解決したからと言って、それは「総理」の立場で描くことではない。いや、描いてイイのだけども、個人問題をメインにするべきではない。国や国民の抱える問題やピンチを解決させることが、「総理」という設定として活かせる物語である。
何だかんだ言って今後も三谷作品は追いかけていこうと思う、といったところで「カット、カット」。
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