鶴瓶さん主演の『閉鎖病棟 それぞれの朝』を観た。
『閉鎖病棟 それぞれの朝』 主演の鶴瓶さんの存在感。 病院側の管理の甘さ・・・。 監督:平山秀幸 出演:笑福亭鶴瓶 綾野剛 小松菜奈 |
山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生のベストセラー小説『閉鎖病棟』を映画化。
『愛を乞うひと』の平山秀幸が監督・脚本。
笑福亭鶴瓶が秀丸役で『ディア・ドクター』以来10年ぶりの主演。
秀丸と心を通わせるチュウさんを『そこのみにて光輝く』の綾野剛、女子高生・由紀を『渇き。』の小松菜奈がそれぞれ演じる。
2019年製作/117分/PG12/日本
配給:東映
長野県小諸の精神科病院では、さまざまな過去を持つ患者たちが入院している。
死刑囚だった梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)、幻聴が原因で暴れるようになり周囲から煙たがられている元サラリーマンのチュウさん(綾野剛)、不登校のため通院する高校生の由紀(小松菜奈)。
彼らは明るく生きて行こうとしていたが・・・。
冒頭、一番驚いたのが「死刑執行」のシーンでの、若かりし頃の鶴瓶さんの容姿である。
現在の鶴瓶さんが若かりし頃を演じているのだろうが、本当に若いのだ。特殊メイク的なことをしているのだろうが、「若くなっている鶴瓶さん」を見られたのは非常に驚いた。
本作での優れた点は、鶴瓶さんの若かりし頃の映像とキャスティングである。
鶴瓶さんと綾野剛さんと小松菜奈さんというキャスティングは「正解」ではあるが、「狙いすぎた感」があるのも否めない。
この三人のキャスティングをすることによって、映画の質は格段に良くなる。ヘタな演出をしない限り、悪くなりようがないのだ。
また脇を固めるキャスティングもガッツリと優秀な役者を起用して、「狙い過ぎた感」を非常に感じるのだ。
彼らが集結することで、大きな失敗はないだろう。
そして肝心な物語ではあるが、観ている者にとって、いささか疑問があるものだ。
一番冷めたのは、鶴瓶さんの奥さんの浮気シーンである。
不倫相手と盛り上がっている割には、二人とも衣服を着ているのだ。そもそも玄関の扉を大きな物音を立てて帰宅した鶴瓶さんに気が付かなかったのも違和感があった。
逆上した鶴瓶さんが、すぐに包丁を握ってためらうことなく刺し殺したのも違和感があった。
その立場になったことがないので感情の動きはわからないが、あんなに反射神経のように刺し殺してしまうものだろうか。実際は、もっとパニックになって何も出来ない気がする。刺し殺すまでに時間がかかる気がするのだ。
とは言え映画なので物語を進行させるには、そう描かざるを得ないのも理解出来る。
さて、この閉鎖病棟という精神病院は、非常に管理がゆるいのだ。
こんなに暴力的で野蛮な男を野放しにしている病院側に大きな問題があったのではないか。
周囲の人たちが迷惑をこうむって、「いなくなって欲しい」と願う存在のヤバイ人間なのだ。
病院側は、もっと目を光らせて監視、管理しておくべきだろう。
この男が問題を起こす事は誰にでも容易に理解出来る。
であれば、病院内で真面目に過ごしていた人間が問題を起こすという描写の方が良かった。
そうすると、皆が「いなくなって欲しい」と思えない相手にはなってしまうが・・。
鶴瓶さんというより、病院側の落ち度が大きいのは明らかだ。
ラスト、車椅子に座った鶴瓶さんが必死で立ち上がろうとする。何度も何度も、諦めずに立ち上がろうとする。
この映画の最大の良さは、オープニングシーンとラストシーンに集約されている。
映画の途中での物語は、おまけみたいなものかもしれない。
「いや、その過程が重要なのだ!」という意見もあるだろが、その過程はツッコミどころが色々と多い。オープニングとラストシーンに、僕は本作の魅力を感じた。
また鶴瓶さんが主役であるからこそ成立した映画である。他の役者では成立しない。
鶴瓶さんの存在感は異常なまでに凄い、といったところで「カット、カット」。
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