岩井俊二監督の最新作を観た。
『ラストレター』 無茶な設定。 広瀬すずの25年後が松たか子では勘違いしない。 監督:岩井俊二 出演:松たか子 広瀬すず 庵野秀明 |
手紙の行き違いから始まった2つの世代の男女の恋愛模様と、それぞれの心の再生と成長を描いたラブストーリー。
『Love Letter』『スワロウテイル』の岩井俊二監督が、自身の出身地・宮城を舞台に撮影。
主人公・裕里を松たか子、未咲の娘・鮎美と高校生時代の未咲を広瀬すず、鏡史郎を福山雅治、高校生時代の鏡史郎を神木隆之介がそれぞれ演じる。
2020年製作/121分/G/日本
配給:東宝
夫と子供と暮らす岸辺野裕里(松たか子)は、姉・未咲の葬儀に参列。
未咲の娘・鮎美から、未咲宛ての同窓会の案内状と未咲が鮎美に遺した手紙の存在を告げられて、未咲の死を知らせるため同窓会へ行く裕里だったが、学校の人気者だった姉と勘違いされる。
そこで初恋の相手・鏡史郎と再会した彼女は、未咲のふりをしたまま彼と文通をするのだが・・・。
岩井俊二監督の描く世界観は美しくて、その演出も「さすが」だと思うが、これは設定とキャスティングに無理がある。
製作側サイドもそれを踏まえた上で作っているとは思うが、どーしたって感情移入が出来なくなる。
25年の時を経たといっても、容姿がそこまで激変するのか?
太ったとか、ハゲたとか、老けた、とか、中には面影のない人もいるが、本作の変貌ぶりは受け入れがたい。
では現在の神木隆之介君の25年後が福山雅治になると思えるだろうか。
見た目云々は置いといたとしても、身長や声の低さが全然違う。
まぁ、まだ福山雅治の設定は受け入れよう。
問題は松たか子である。
松たか子の姉が自殺をしたことによって、それを伝えるために松たか子は姉の同窓会に出席するのだが、同級生たちから「姉に間違えられる」のだ。
姉の学生時代と似ても似つかぬ容姿なのに。
学生時代の広瀬すずの25年後が松たか子と見間違えられるだろうか。
何で、この女の子の25年後が、皆、松たか子になって疑わないのか?
同級生に姉の親しい友達はいなかったのか?
自分の友達の兄弟が同級生に来ていたら、自分なら気付くけど。
よくもまぁ、こんな無茶な設定を強引に押し通したもんだ。
姉の元旦那である豊川悦司はクズ人間ではあるが、そうは見えない。
なかなか頭のイイ男である、というのが印象だ。
これだけ頭のイイ男が、自堕落な生活を送っていることに違和感を感じる。
もっと「何を言っているのかわからない」ぐらいのクズならば、説得力もあったが。
また福山雅治が25年間も、ずっと変わらず思い続けていたという設定も嘘くさ過ぎるのだ。
未咲に対しての執着力は相当なもので、「未咲」という小説を書いたり、25年後でも追いかけまわすというストーカーぶりなのだ。
福山雅治が演じているから爽やかに映るが、実際にそんなヤツがいたら気持ち悪い。
それ程までのストーカー気質の男が、この25年もの間、未咲に会いに行ってないわけがないのだ。
もっと早くに未咲と接触をとり、告白のひとつでもしていなければ不自然である。
福山雅治は、名刺にも「小説家」と書いて「小説家」と名乗っているが、一作品書いたぐらいで「小説家」と名乗るのは恥ずかしい。
「お前、今、何やっているの?」ということだ。
小説で飯も食っていない。ましてや小説を書いてすらいない。
「小説家」という響きと、ルックスの良さに酔いしれているだけなのだ。
これが薄汚い男が同じことをしていたら、目も当てられないのである。
岩井俊二監督の演出は素晴らしいものがあったが、その前に設定へのツッコミどころが多くて、映画にのめり込むことが出来なかった。
庵野秀明以外、皆、美形というのも、おかしな話だ。
庵野さんには失礼だが。
設定を受け入れられるかどうかが、この作品を観る上での分かれ目である、といったところで「カット、カット」。
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