楳図かずお先生の漫画を買い漁っている。
その突拍子もない発想力がたまらない。
『洗礼』
楳図かずお (著) |
「何でそうなるの?!」の連続なのだ。
欽ちゃんが『洗礼』を読んでいたら、3頁に一度は声を上げていただろう。
僕でさえ10頁に一度は、「何でそうなるの?!」と飛び上がっていたのだから。
女性は自分の美貌が崩れていくことに恐怖を感じた。
顔にある大きなアザを気にした女性は娘を生んで、娘と脳みそを移植して、娘のカラダを乗っ取り生きようとした。
その計画的犯行を実行するために娘を大事に育てていたとは恐ろしい。
「何たる発想」か。楳図かずお先生の発想はぶっ飛んでいて読者の予想がつかない。
顔のアザは仕方ないとしても、そんなに美を意識するのならば「その体型」は、いかがなものなのか?
もうちょっとスタイル維持に気を配った方がいいだろう。顔のアザは関係ない。そのスタイルだと、アザがなくても全然美しくないけど・・・。
『洗礼』では、登場人物が行動のひとつひとつを台詞にする描写が多くて、思わず笑ってしまう。
実の母親が娘のカラダを奪おうと襲ってくるという恐怖が、最高にエキサイティングである。
「ギャーッ!!」と叫ばざるを得ない。
楳図先生の画風と、どこへ向かっていくかワカラナイ物語展開に心躍るのである。
怖いという感覚はない。
恐怖漫画を読みながらゲラゲラ笑っている。
楳図先生の天才ぶりを余すことなく自分の中に吸収しながら、読者は「笑い」を放出していくのである。
母親の美貌を手に入れたい欲求は理解出来たとしても、その美貌を手に入れて慎ましくひっそりと生きていけばいいと思うのだが。
何でそこまで酷いことをする「心の醜い」人間になってしまうのか。
その割に学校の担任の先生を自分のモノにしてしまおうなどと、手身近なところで済ませようとしてしまうのか。
美貌を手に入れたのであれば芸能界へと道を進めて、アイドルや役者と華々しく交際でもすればイイではないか。
そんな疑問も残るが『洗礼』の面白さといえば、学校内での出来事を描写することによって大きな魅力がある。
娘の奪われた日常が急激に変化していく。
「娘」が生きてきた毎日を、「母」である別人格の人間が乗っ取り生きていくことが、本作のミステリーであり想像を絶する恐怖なのだ。
自分のクラスメイトの中に、しれっと「同級生」のフリをした他者がいるなんてことは想像もつかない。
しかし、ぶっ飛んだ発想の楳図かずお先生は、最後の最後まで読者を騙し続ける。
「は?そんなのアリ??」という展開で、僕は「ギョエーッ!!」と叫ぶのだ。
う~ん、名作。
見事なまでの恐怖と笑い。
後世に残していきたい作品である。
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