諸星大二郎先生の漫画原作を実写化した『壁男』を観た。
『壁男』 壁男の描写がセコい。 夢オチの多用はサイテー行為。 監督:早川渉 出演:堺雅人,小野真弓 |
カルト的な人気を誇る漫画家の諸星大二郎による短編を映画化した異色ホラー作。
主演は堺雅人、恋人役を小野真弓が務める。
2006年製作/98分/日本
配給:トルネード・フィルム
TVの情報バラエティ番組でレポーターを務める響子の元に届いた一通の投書。
それは、壁の中からいつもこちら側を見ているという“壁男”に関する噂であった。
番組での紹介をきっかけに“壁男”の噂は日本中に広まり、響子の恋人でカメラマンの仁科(堺雅人)は壁男に憑かれたように壁の写真ばかりを撮るようになった。
そして、壁の中と外の境界に興味を持ち始めた仁科は、次第に常軌を逸した行動を取るようになっていく。
諸星大二郎先生の漫画『壁男』を読んでいたので、「実写映画されていたんだぁ」ということで観てみることに。
堺雅人さんは好きな俳優なので、楽しみであった。
楽しみにしてはいたが、予想通りに大した映画ではなかった。
30分程のTVドラマでちょうどイイのではないか。
不満な点はいくつかあるが、一番の不満は[壁男]の描き方である。
漫画では壁の中に人がいるような描き方をしていて、それが奇妙であり、[異次元の中]に引き込まれる世界観があった。
しかし映画では、ただの壁を映しているだけである。
何の変哲もない壁を映して、「壁男が実在するかもしれない」という設定を押し通すのは無理がある。
それならば何でもアリだ。
部屋の空間を映して「幽霊がいるかもしれない」で、延々と幽霊が登場しないまま映画を終わらせることだって出来る。
また堺雅人が、壁男に執着していく理由も意味不明である。
気が狂ったかのように壁男の存在を信じてのめり込んでいくが、あまりにも不親切な描写で共感出来ない。
さらに、小野真弓演じる響子に想いを寄せるストーカーのような男が登場するが、彼が壁男によって攻撃されるなどの被害があれば壁男に対する恐怖も助長されたのではないか。
そして不満点のもう一つは、「夢オチ」的な描き方である。
「夢オチ」というのは、今まで観てきた時間を一瞬で台無しにしてしまうサイテーの行為なのだ。
不思議体験の数々が「夢」でオチをつけられてしまっては、視聴者をバカにし過ぎである。
「夢じゃなかった」みたいな曖昧な描き方もしていたが、それも不要である。
目が覚めたら壁の中にいて「自分が壁男になっていた」とか、夢だと思って安心した矢先に「壁が崩れて下敷きになる」とか、夢を使うのなら、キッチリと決着を付けて欲しい。
今回は諸星大二郎先生の原作ということで観たが、予想通りにガッカリしたといったところで「カット、カット」。
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