実写映画の『ミスミソウ』が良かったので、漫画版も読んでみることにしたのだ。
『ミスミソウ』
押切 蓮介 (著) |
以前に観た実写映画化された『ミスミソウ』が美しさと卑劣な殺戮を兼ね揃えた良作であったので、原作漫画を読んでみたいと思い、映画を観終わった後に即ポチッた。
その割には読み終えるのに月日が経ってしまったが、気になった漫画を購入したまま部屋に「積ん読」状態の漫画が多々あり、読破するのに時間がかかってしまう。
しかし本腰を入れて読み始めると一気に上下巻を読み終えた。
漫画版では押切蓮介さんの独特な画風が物語の残酷さとのアンバランスな印象を受け、転校生の野崎へのクラスメイトのいじめがエスカレートしていく模様を傍観する第三者として読み進めていく。
可愛いキャラクターの絵柄が一瞬で鬼の形相に変化したりすることで、人間の心に潜む壮絶な恐怖を表していた。
いじめに歯止めが利かなくなり家に放火して家族を焼き殺す最悪な展開から、野崎の心に復讐の炎が点火する。
クラスメイトが全員クズで、人を殺めることに快楽を覚えているような根っからのサイコパスたち。
さらに担任の先生までもがクズなので、よくもここまでクズばかりを集めたクラスが存在したものだと感心してしまいそうになる。
真っ白な雪景色の中で飛び散る血しぶき、狂った人間が人間を狩るゲームを楽しみながら狂喜乱舞する。
漫画原作モノが実写映画化された時、漫画原作を超える実写はなかなか難しいことではあるが、個人的には『ミスミソウ』は実写映画の方が良かった。
漫画版と別モノと捉えた方が正しいのかもしれないが、実写版での映像による美しさとショッキングさが素晴らしく、『ミスミソウ』を最高のカタチで映像化させたと思う。
殆ど物語は同じだが、実写での脚色は良く出来ていた。
漫画版での良かった点を挙げれば、どこか冷めきったように淡々と描かれていく中で、突然大ゴマでショッキングなシーンを見せたりすることのメリハリがあり、漫画ならではの表現が楽しめることだ。
実写では役者の演技で伝えていくが、漫画では瞳の大きさや口の形を大きく変化させることが出来、さらに絵のタッチを変化させることによって恐怖を演出することが出来る。
痛い痛い殺戮シーンや純粋なほどに醜く乱れる心の声が押し迫って来る。
傍観者であった第三者から、読み深めていくことで抜け出せない雪の深みにハマってしまった『ミスミソウ』の当事者になっているのである。
「あー、この世界の当事者には決してなりたくない」そう思いながら、本のページをそっと閉じるのであった。
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