草彅剛主演の『ミッドナイトスワン』を観たのだ。
『ミッドナイトスワン』 幻想的なバレエシーン。 他人事ではない心の琴線に触れる物語。 監督:内田英治 出演:草彅剛 服部樹咲 |
企画、脚本、原作を手掛けた『下衆の愛』の内田英治監督のヒューマンドラマ。
トランスジェンダーの主人公・凪沙役を草彅剛が演じる。
一果役を演じる新人の服部樹咲がオーディションで抜擢され、水川あさみ、真飛聖、田口トモロヲらが共演。
第44回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞。
最優秀主演男優賞を草彅剛が受賞した。
2020年製作/124分/G/日本
配給:キノフィルムズ
新宿のニューハーフショークラブのステージに立ち生活を送るトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)は、養育費を当て込んで育児放棄された少女・一果(服部樹咲)を預かることに。
社会の片隅に追いやられる毎日を送ってきた凪沙は、一果と接する内に今まで抱いたことのない感情が生まれていることに気付く。
かなり難役であるトランスジェンダーの凪沙を草彅剛が演じたが、草彅剛の持つ人柄、性質に合っていた気がして難役にも関わらず違和感なく観ることが出来た。もちろん草彅剛の演技力も相まってではあるが。
そしてオーディションで抜擢され新人ながら、こちらも難役を務めあげた服部樹咲演じる一果も見事にハマッていた。
育児放棄され親の愛情を知ることのない一果と凪沙の暮らしの中で、二人が微妙に少しずつ心を通わせていく過程に心震える。
社会から疎外感を感じ孤独であった二人はお互いに痛みを理解しながら、その繊細で壊れてしまいそうな感情が演技を超えて伝わってくるのだ。
一果の友人・りんは一見お金持ちの娘で恵まれた環境で育っているように見えるが彼女もまた心に虚しさと闇を抱え、環境は違えどそれぞれの立場で描かれる苦悩が垣間見える。一果の母親もきっと苦悩していたように誰もが抱える疎外感や孤独感が、本作を観ている人たちの心の琴線に触れるから、この物語が他人事ではない。
トランスジェンダーや虐待問題を扱いつつも誰もが抱える心の虚しさを描き、それでも懸命に美しく踊ろうと泥にまみれながら生きる人間の姿に胸を締め付けられる。
凪沙と一果がバレエのレッスンをするシーンや二人の食事シーン、凪沙が「お母さん」と言われ嬉しそうに笑うシーン、海辺で二人が寄り添うシーン、本作には名シーンとなるものが多い。
一果がステージで踊るバレエのシーンは幻想的で、現実の辛さをほんの一瞬忘れさせてくれる。
りんがバレエを踊りながら屋上から飛び降りるシーンは衝撃的。凪沙が実家で一果を取り戻すために暴れて、乳が丸出しになった時は「なんでやねん!」と思ったが。
切ない物語と役者の演技、名シーンが輝く傑作であった、というところで「カット、カット」。
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