イーサン・ホークが連続殺人鬼を演じた『ブラック・フォン』を観たのだ。
『ブラック・フォン』 色んなジャンルを含んだ「ホラー」。 幽霊と少年の友情と兄妹愛。 監督:スコット・デリクソン 出演:イーサン・ホーク メイソン・テムズ マデリーン・マックグロウ |
『透明人間』『ゲット・アウト』等のスリラー作品の話題作を多数送り出しているブラムハウス・プロダクションズのサイコスリラー。
原作はスティーヴン・キングの息子であるジョー・ヒルの短編集『20世紀の幽霊たち』所収の一編『黒電話』。
『20世紀の幽霊たち』 |
『ドクター・ストレンジ』『エミリー・ローズ』のスコット・デリクソンが監督。
連続誘拐犯を『フッテージ』などのイーサン・ホークが演じる。
メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウらが出演。
2022年製作/104分/PG12/アメリカ
原題:The Black Phone
配給:東宝東和
アメリカ・コロラド州の町で、子どもの連続失踪事件が起きていた。
気弱な少年フィニー(メイソン・テムズ)は学校の帰り道に、マジシャンを名乗る男(イーサン・ホーク)と出会い無理矢理誘拐され、気が付くと地下室に閉じ込められていた。
その部屋には頑丈な扉と鉄格子の窓、断線している黒電話があり、突然通じないはずの電話が鳴り響く。
一方、フィニーの妹のグウェン(マデリーン・マックグロウ)は、兄の失踪に関する不思議な夢を見る。
1978年を舞台に誘拐事件を取り扱い「何でこの時代設定?」と疑問があったが、黒電話が重要なアイテムとして登場することと、街中の人がスマホを持っていたり監視カメラが設置されまくった現代では非常に不都合が多く本作の物語は作り難い。
更には1970年代、80年代、アメリカではシリアルキラーが大豊作だったという恐ろしい時代。本作のイーサン・ホーク演じる殺人鬼マジシャンのモデルは、「アメリカ史上最悪」と呼ばれた「殺人ピエロ」ことジョン・ウェイン・ゲイシー。殺害した少年の数は33人、自宅から29人分の遺体が見つかったことで世間を震撼させ、本作の時代設定と同じ1978年に逮捕された。
『燃えよドラゴン』や『悪魔のいけにえ』といった映画タイトルを台詞に盛り込み、当時の少年たちが夢中になった映画を知ることが出来る。子供たちのいじめや暴力も現代とは違う。SNS上で陰湿に叩いたりスマホで撮影したりすることはなく、ひたすら拳と拳で真っ向からド突き合う。勝てばヒーローだが、負けたらいじめ続けられる悲惨な学校生活が待っている。
本作の内容を余り知らないまま鑑賞したので最初は『IT』みたいな子供を襲う殺人鬼の物語かと思ったが、色んなジャンルを含んだ物語だと分かって驚いた。
誘拐や監禁等の「事件」、連続殺人を繰り返すシリアルキラーの「人怖」、それらの噂が広がる「都市伝説」、妹が夢で犯罪を推察する「予知夢」、幽霊から黒電話に着信がある「心霊」、監禁された場所からの「脱出ゲーム」等、あらゆるジャンルがひとつの作品に収められた「ホラー」である。
黒電話を通して殺害された少年たちと会話が出来た時は「あれれ?心霊ものなの?」と思い、その後に堂々と幽霊の姿が現れるのだから「少年と殺害された少年たちの幽霊がチカラを合わせて戦う物語なのね」と解釈した。
主人公の少年フィニーが誘拐される前は、確かに他の少年たちとの友情物語を描いていた。また勝ち気の強い妹との関係。事件の内容を夢で見ることで警察に疑われ父親にお仕置きされてしまう。そんな妹は兄が行方不明になったことで、自分の特殊能力を大いに発揮する。
一番怖かったのは、地下室の鍵をワザと開けっ放しにする罠を仕掛け、階段の上で上半身裸の姿でベルトを手に座り待ち受けていたイーサン・ホークだ。アレはマジ怖い。
一度脱出に成功するも、再び捕まってしまう恐怖も悲しい。
ラスト、少年フィニーはめでたく殺人鬼に打ち勝つことが出来たが、止めを刺して欲しくなかった想いがある。イーサン・ホークの謎が余りにも多過ぎるからだ。警察に捕まった後、彼の異常な犯行をしっかりと取り調べして欲しかった。映画の結末としては息の根を止めておくことが正解なのかもしれないが。
ってか、いつも警察が突入するのが遅いんだよな。そりゃ警察が全てを解決してしまっては映画としては面白くないので仕方ない。
色んなジャンルを含んだホラーは予想外に楽しめる作品であった、といったところで「カット、カット」。
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