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薬師寺 東西両塔『釈迦八相像図録』お釈迦様の生涯。

日、奈良市の薬師寺を訪れた際に国宝東塔の落慶記念で東塔・西塔が特別公開されており、内陣に祀られた「釈迦八相像」に興味を抱き『釈迦八相像図録』を購入した。

 

釈迦八相像図録

 
薬師寺は天禄四年(973)と享禄元年(1528)の二度の火災により大半の堂塔を焼失してしまうが、東塔は被災することなく白鳳時代より創建の姿を現在に伝えている。

東塔と西塔に祀られた「釈迦八相像」とは、お釈迦様の生涯の中でも重要な八つの場面をいい、入胎(にったい)・受生(じゅしょう)・受楽(じゅらく)・苦行(くぎょう)・成道(じょうどう)・転法輪(てんぽうりん)・涅槃(ねはん)・分舎利(ぶんしゃり)として描かれているという。

東塔には、お釈迦様が釈迦国の王子として生まれながらも、出家し悟りに至る前半生(因相)が。西塔には、悟りの後半生(果相)が表現されている。

薬師寺では「釈迦八相像」を復興するにあたり、彫刻界の第一人者である中村晋也さんに制作を依頼。更に、平成二十一年から行われていた東塔の解体修理が完成。因相の四相像も制作され、東西両塔は外観だけではなく、約五百年ぶりに本来の姿である釈迦八相像を安置荘厳することが出来たのだ。

図録では「釈迦八相像」の写真とともに解説が付き非常にわかりやすい。

 

〈東塔 因相〉 – 入胎・受生・受楽・苦行 –

 

入胎】は、お釈迦様が母の身体に宿る神秘的な状況を表した場面。摩耶夫人が穏やかな寝姿で、六牙の白象が体内に入る夢を見ている。六本の牙を持った白象は、お釈迦様の前世と言われているのだ。

受生】では摩耶夫人の出産の場面。生まれたばかりのシッダールタ太子(お釈迦様)が「七歩行」の後に手を挙げ「天上天下唯我独尊」と唱える有名な場面が見られる。

受楽】には様々な場面が表されている。カピラ城でシッダールタ太子はヤショーダラ姫と結婚。ラーフラという男児を授かる場面から、牛や農夫の重労働等を見て太子が木の下で物思いにふける「樹下観耕(じゅげかんこう)」の場面。

シッダールタ太子がカピラ城の東門から出て老人たちと出会い、南門から出て病人たちと出会い、西の門から出て死人と出会う。そして北の門を出て出家修行者に出会う「四門出遊(しもんしゅつゆう)」と、シッダールタ太子が出家の決意をしてカピラ城を出て行くことになる「出城」の場面。

苦行】では修行生活に入った様子が表され、修行者となった釈迦菩薩(シッダールタ太子)が高名な仙人を訪ねたり、マガダ王国のビンビサーラ王との出会い、苦行林で五人の修行仲間がいたが離れ単独で修行を続け、前正覚山(ぜんしょうかくざん)で苦行に励む。

苦行を六年間続けるが、楽師が奏でるビーナの音色に「丁度良い弦の張り具合で美しい音が出る」ことに気付き、過酷だった苦行をやめる決意と「中道(ちゅうどう)」を悟り激烈な苦行をやめ、尼連禅河(にれんぜんが)で身を清めた釈迦菩薩がガジュマルの樹の下で瞑想をする場面が表現されている。

 

〈西塔 果相〉 – 成道・転法輪・涅槃・分舎利 –

 

成道】は、真っ暗な中でヒッパラ樹(菩提樹)の根元で冥想をするお釈迦様の姿が。お釈迦様の悟りを阻止するために、様々な手法でマーラ(悪魔)が邪魔を仕掛ける。美しい三人の娘たちの誘惑や魔衆軍団の恐怖の攻撃にも動じず冥想を続け、成道の証人として女神を召喚。

転法輪】では各地を旅して沢山の人々に教えを説かれた様子が。鹿野苑に向かい苦行仲間だった五人の比丘(びく)たちに初めて説法をして、死後三十三天に昇られた母のマヤ夫人への説法を終え、金・銀・瑠璃で出来た階段を降りてくる。

マガダ王国のビンビサーラ王との再会。静かな修行の場としてビンビサーラ王は、お釈迦様に竹林精舎を寄進。

涅槃】は八十歳の生涯を終え沙羅の樹の間に身を横たえ涅槃に入り、その周りで様々な弟子たちの姿が。

分舎利】ではお釈迦様の遺骨(仏舎利)を八つの国に分けた様子を表した場面を。

彫刻家の中村晋也さんによって手掛けられた「お釈迦様の物語」は先に西塔の果相が制作され、次に東塔の因相が作られ、実に十一年の歳月を経て八相が揃ったという。何と96歳になった今でも現役の彫刻家として活動しているのだから凄い。

実際に生で見た時には分からなかった場面の詳細が、図録を通して写真と解説を読むことで理解出来て、非常に有難い図録となった。

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