コンニャロー!カンヌパルムドール受賞のコレーダさんの、是枝監督の『万引き家族』を観てきたぞ!コンチキショウ!!
映画の感想を書きますが、ネタバレありなので、まだ未見の方はご注意下さいませ。
先ずはこれ、見事なキャスト陣。
「リリーと安藤サクラと樹木希林なんて最強やん!」
樹木希林さんの演技がバカ上手いのは全国民が知っているとして、リリーさんの『凶悪』『SCOOP!』『そして父になる』等での演技はバケモノ級。
安藤サクラさんの『百円の恋』『0.5ミリ』『贖罪』等の演技もバケモノ級である。
『万引き家族』ではバケモノ級の役者の演技が混ざり合い、掛け算掛け算で、演技力に圧倒されっ放しなのだ。
何気ない日常の会話シーンで、あまりにも演技が上手すぎて、思わず泣きそうになった。
最近の映画はヒーローが多く、主役が完璧過ぎる。美形で何をやっても万能。
『万引き家族』の家族は、どうしようもなくクズ。特に大人は、どうしようもない。
リリーが一番クズで、物語の最初から最後まで清々しいほどの見事なクズっぷり。
クズを主役にして、クズのまま貫いた作品に逆に感動してしまった。
邦画特有のあざとい、しょーもない感動を見事に省いてくれた演出っぷりに、逆に感動しちまったぜ。
・号泣シーンがない
しょーもない邦画の、この手の話だと、必ずあざとい号泣シーンを入れてくる。
安藤サクラの泣きの演技はカンヌで大絶賛だったらしいが、安藤サクラの泣きの演技は確かに素晴らしく美しかった。
わざとらしい泣き顔をすることなく無表情を装いながら、とめどなく流れる涙を手の平で拭う。涙を手の平で、顔へ、髪の毛へと、涙を散らそうとするが、それでも瞳から流れる涙が、とても美しかったのだ。
・結局「お父さん」と呼ばなかった。
リリーは、子供に「お父さん」と呼ばれたかった。
何度も「お父さん!」と呼べば感動のシーンになるチャンスはあったが、是枝監督は決して安易で安っぽい感動に走らなかった。
しょーもない邦画なら、号泣しながら「お父さん!」と叫んでいたに違いない。
・追いつけないリリー
バスに乗った子供を追いかけるリリー。
安っぽい邦画なら、走っている人間が何故かバスに追いついて、子供が振り返り号泣しながら「お父さん!」と叫んでいたに違いない。
だが、リリーはバスに追い付けない。
ダサイ走り方で夢中で走る。足も早くないだろうが、逃げ足だけは早い正真正銘のクズっぷり。
振り返らない子供。
リリーがもう追いつけなくなって、遠ざかってしまったタイミングでそっと振り返るのだ。
あざとい過剰な感動を省いた、そのジレンマが観ている者の心に、グラグラと揺さぶりをかけてくるのだ。
見事なキャスティングではあったが、リリーさん、安藤サクラさん、樹木希林さん以外は、美男美女ばっかりなのが気になる。
皆が美男美女というのは、ものすごくリアルに描いている作品なのに、リアリティーがなくなってしまう。僕たちの日常生活に、そんなに美男美女がいるわけではない。
是枝監督がテレビでドキュメンタリーを撮っていたからこそのリアルな演出で、本当に素晴らしかった。
「あー、面白かった~!」というような感じではなくて、何だか切ない余韻を引きづったまま。
その余韻がだんだん、本作の深さに考えさせられるのである。
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