鏡の中の自分は、鏡の外に映る自分を知っている。
鏡の中の自分は、鏡の中にいることの法則を守り続けてくれるだろうか?
他の映画の構想を練っていたら、「鏡」を題材にした映画のアイデアが浮かんだ。
鏡を扱った大体の筋道を考えた時に「ありがちな物語だなぁ」と自分で思ったが、「ありがちな物語」だけど自分なりに工夫出来ないか?と考えた。
僕の一つのこだわりとしては、鏡から飛び出してきた自分が鏡に映った時のように反転していることだ。その表現をするために、敢えて文字の書かれたTシャツを着用している。
また鏡から襲ってくる自分は、ヒッチコックの『サイコ』をイメージした。『サイコ』の名シーンでは、シャワールームでシャワーを浴びている女性に黒い影が女性を襲うものである。「刺す」影と「刺される」女性が交互に映し出されて、サスペンスな音楽が鳴り響くのである。
前作『CONNECT』に引き続き『Horror Mirror』では台詞は一切ない。極力、台詞のない作品を制作しようと心掛けている。
現在、公開しているYouTube上では英語でも検索できるように設定してある。海外から視聴された方が「日本語」の台詞があっては不便なので、台詞を消去することで世界中の人たちが作品を楽しめるようにしてあるのだ。
鏡は大抵の人たちが毎日見るであろう。鏡に映った自分を確認している。
鏡の中の自分は、一体「どんなふうに思って」自分を見ているのだろうか?
「鏡に映ったものに感情なんてあるわけないだろ!」と誰もがそう思っているのだ。
果たして本当にそうなのだろうか?
鏡の世界の人たちは何でも知っている。
例えば、何かの事件現場に防犯カメラが設置されていないと、その事件を調査していくことは苦労するものだが、事件現場に映し出されていた鏡があれば何でもわかるのではないか。鏡の中の世界の人たちは何でも知っている。
車の中にも鏡はあるし、「窓ガラスに反射した自分」というものを含めれば、その数は計り知れない。
もしも世界中の鏡が録画機能が付いていて、そのデータを永遠に保管することが出来たのなら、それはプライバシーの侵害とともに、人類にとって大きな財産になるのではないか。
戦国時代の映像を観ることは出来ないが、鏡によるデータが残っていれば古い鏡を通して戦国時代の暮らしを垣間見ることが出来る。
もしも鏡の中の住人が「鏡の世界から抜け出したい」と思っていたとしたのなら、僕たちはうかうかと鏡をのぞき込んでいる場合ではないのだ。
『ホラーミラー』 上映時間4分33秒 |
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