少しばかり気になっていた『シライサン』を観てみた。
『シライサン』 色んなパターンを考えたシライサン演出。 新しい恐怖が描かれた良作。 監督:安達寛高 出演:飯豊まりえ 稲葉友 忍成修吾 |
人気小説家・乙一として知られる安達寛高が長編監督デビューを果たしたホラー。
飯豊まりえが初の映画単独主演。
安達監督が脚本も手がけて、「その名を知ると現れて、視線をそらすと殺される」という新たなホラーキャラクター「シライサン」の恐怖をオリジナルストーリーで描く。
『小説 シライサン』
乙 一 (著) |
2020年製作/99分/PG12/日本
配給:松竹メディア事業部
眼球が破裂した遺体が立て続けに発見された彼らの共通点は、死ぬ前に何かに取りつかれたような状態にあったこと。
そして死因は全て心臓麻痺だった。
目の前で親友を失った大学生の瑞紀(飯豊まりえ)と、同様に弟を亡くした春男(稲葉友)は一緒に事件の真相を探る。
先ずは作家の乙一さんが安達寛高という名前で監督デビューを果たした作品であったことが驚きである。デビュー作とは思えないほどに良く出来た作品であった。
「シライサン」って何で「さん付け」で呼んでいるんだろう?という疑問と、作品自体もあまり期待はしてなかったが、物語も見やすくて「シライサン」の登場も不気味で面白さが工夫されていて良かった。
「シライサン」って「さん付け」で呼んでいることは、怪談話のネタ、都市伝説のネタ的なモノを伝える時に「シライサン」という名を語る上のことなので違和感なく受け入れられた。何もわざわざ幽霊に「さん付け」をしているわけではない。
物語も非常に簡潔的でわかりやすくて良かった。怪談話を聴いた者が「シライサン」という名前を知ってしまったことで起こる恐怖。そして、シライサンから目をそらしてしまえば眼球が破裂して殺される。
シライサンの登場シーンも色んなレパートリーがあり工夫がなされていて面白かった。
だんだん近づいてくる恐怖というのが、観ている者にも恐怖や不安のプレッシャーを与えてくれる。
個人的には、森の中でフリーライターの男性に襲いかかるシーンでのシライサンと、ラストでの踏切シーンがすこぶる良かった。
踏切の向こう側でシライサンが現れて、その間を電車が通過していく。通過すると踏切の向こう側にいたシライサンは姿を消しており、男の真後ろに立っている。これは素晴らしい演出であった。
また女性が後頭部を強打したことで「んな、アホな」と思っていた。「それはシライサンは全く悪くなくて、お前たちのせいやぞ!」と。それにしても女性が生きていて良かった。後頭部強打して死んでいたらシャレにならない。結果、後頭部を強打したことで記憶喪失になり「シライサン」のことを忘れるというオチも良かった。
ひとつ難癖をつけるとしたのなら主役である女性と男性の会話シーンが非常につまらない。女性の友達が死んだことによって友達がSNSで『いいね』を押してくれなくなったことを語ると、「今度は僕がその『いいね』を押そうか」と男性が言う。なんやねん、それ。なんてくだらない会話や。
「吊り橋効果というのがあって、男女が同じ怖い体験をするとくっつくけど長続きはしないんだって」と女性が言うと、「そこから始まることもあるんじゃないかな」と言う男性。こんなツマラナイ会話を一般の男女はしているのだろうか。芸人ならもっと面白いこと言うぞ。・・・彼らは芸人ではないが。
シライサンの登場シーンの描写が特に良かったと思う。色んなパターンを考えて飽きさせない演出が良かった。
映画のオチも良かったというところで、「カット、カット」。
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