長澤まさみ主演の『MOTHER マザー』を観たのだ。
『MOTHER マザー』 美しすぎた長澤まさみ。 それは作品の長所と短所にもなる。 監督:大森立嗣 出演:長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼 |
実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得て描いたヒューマンドラマ。
『日日是好日』『光』の大森立嗣監督が長澤まさみ、阿部サダヲという実力派キャストを迎えた。
『新聞記者』『宮本から君へ』など現代社会のさまざまなテーマを問いかける作品を立て続けに送り出している河村光庸がプロデューサー。
シングルマザーの秋子を長澤まさみ、内縁の夫を阿部サダヲが演じる。
オーディションで抜擢された新人の奥平大兼が息子・周平役。
2020年製作/126分/PG12/日本
配給:スターサンズ、KADOKAWA
男たちと行きずりの関係を持つことで、その場しのぎの生活を送る自堕落で奔放なシングルマザーの秋子。
彼女は息子の周平に異様に執着して、自分に忠実であることを強いてきた。
そんな母からの歪んだ愛に彼女の幼い息子・周平は翻弄されながらも、母以外に頼るものがない。
身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれる。
その絆が、17歳に成長した周平が殺人事件を起こすことになる。
実際に2014年に起きた、少年による祖父母殺害事件から着想を得て映画化された本作は、長澤まさみが怪物のような母親役ということで話題にもなったが、それは本作の長所でもあり短所でもあるのだ。
長澤まさみが怪物のような母親というのは、確かに面白い配役ではあるが、その美貌から現実味がなくなってしまうのである。
本来の美貌を役作りのために特殊メイクで変貌させたシャーリーズ・セロンの『モンスター』とはエライ違いなのだ。
なるほど、それならば最初から長澤まさみではなくて、もうちょっと現実味のある人を配役すれば良かったということにはなるが、長澤まさみという存在感がこの映画を魅力的なものにしているのも事実なのだ。
お金がないことで借金を繰り返しながら自堕落な暮らしをする母親なので、「働けよ」と元も子もない至極当然のことを終始思わずを得ない。
その美貌があれば、フツーに働いて愛想よく振りまいているだけで周囲の人たちから好かれ、カネの持っている男と結婚することも容易いことであろう。
あまりにも短絡的な思考回路しかない登場人物に「実際に起きた事件」ではありながら、非現実感が漂っているのだ。
しかし、「実際に起きた事件」は、僕の想像を遥かに超えた非現実的なものであったのかもしれない。事件の当事者たちにしかわからない日本社会の闇があるのだ。
長澤まさみと阿部サダヲの演技力で見れた作品でもあった、といったところで「カット、カット」。
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