評判のイイ、『アルプススタンドのはしの方』を観てみた。
『アルプススタンドのはしの方』 視線の先を想像させる青春映画。 ひと夏の野球応援で成長していく。 監督:城定秀夫 出演:小野莉奈, 平井亜門, 西本まりん, 中村守里, 黒木ひかり |
第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞した名作戯曲を映画化。
全国の高校で上演され続けている兵庫県立東播磨高校演劇部の戯曲。
2019年、浅草九劇で上演された舞台版にも出演した小野莉奈、⻄本まりん、中村守里のほか、平井亜門、黒木ひかり、目次立樹らが顔をそろえる。
数々の劇場映画やビデオ作品を手がける城定秀夫が監督。
2020年製作/75分/G/日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
夏の甲子園1回戦に出場している母校の応援のために来ている、ルールも知らない2人の演劇部員・安田と田宮。訳あって互いに妙に気を遣う安田と田宮。
そこに遅れて元野球部員の藤野がやって来る。
ぽつんと一人、帰宅部の成績優秀女子・宮下。宮下は、吹奏楽部部長に成績で学年一位の座を明け渡してしまったばかりであった。
時折やって来てはひたすら応援で声を出せという英語教師の厚木先生。
やがて、それぞれの想いを抱えたまま、格上チーム相手で戦況不利な野球の試合が終盤に1点を争うスリリングな展開へと突入していく。
すこぶる評判の良かった本作に興味を抱き観たが、そのワンシチュエーションというアイデアで大方の勝ちが決まったと思われる。
高校野球を、アルプススタンドの端の方で応援している高校生たちにスポットライトを当てて物語が展開されていく。
高校の演劇部で上演したものが最優秀賞を獲り、今回の映画化になったそうだが、確かに演劇として良く出来ている。
演劇ならではのアイデアが、上手く映画へとシフトして、本作も魅力的な青春映画となった。
『桐島、部活やめるってよ』のように、彼女らが話す話題の高校球児たちは、姿を現さない。
視線の先で、グラウンドの真ん中で高校球児たちが汗をかいている姿を映し出すように、彼女らの演技が、映画を観ている者の想像力を搔き立てるのである。
「しょうがない」と諦めて、どこかしら冷めていた彼女らが、高校野球の応援を通して、その短いひとときの間で成長していく。
「お前ら、声を出せ~!」と声を枯らしながら、暑苦しい教師を登場させているバカバカしさもイイ。
思いきり壮絶なドラマが巻き起こるわけではないが、日常のささいなドラマの変化に、青春時代の甘く苦い物語が爽やかに心地良く入ってくるのである。
最後、大人になった彼女らがまたスタンドの端の方で再会をする。
この再会シーンに関しては「う~ん」と思った。この再会シーンは必要だろか。
こんな絵に描いたような爽やかな再会シーンは、あまりにも人生が上手くいき過ぎている。
高校生の彼女らが、高校野球応援のあの瞬間に少しでも成長したところが、微笑ましく胸を熱くする物語で、「卒業して大人になった」彼女らも、観ている側の想像に任せれば良いのだ。
ヘタなハッピーエンドを描くよりも、「ひと夏の野球応援」のシーンだけで十分なのである。
僕個人は、ラストの後日談みたいなシーンは不要であった。
それでも、青春映画としてよく出来ていた作品であった、といったところで「カット、カット」。
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