公開から三ヶ月、ようやく『トップガン マーヴェリック』を観てきたのだ。
『トップガン マーヴェリック』 トム・クルーズの人間的魅力。 前作と30年以上経った現実を上手く絡めた続編。 監督:ジョセフ・コジンスキー 出演:トム・クルーズ , マイルズ・テラー , ジェニファー・コネリー |
1986年公開の世界的ヒット作、トム・クルーズ主演『トップガン』の36年ぶりの続編。
主人公マーヴェリックを再びトムが演じる。
『セッション』のマイルズ・テラー、『ビューティフル・マインド』のジェニファー・コネリー、『アポロ13』のエド・ハリスが共演。
前作でマーヴェリックのライバル、アイスマンを演じたバル・キルマーも再出演。
『オブリビオン』のジョセフ・コジンスキーが監督。
2022年製作/131分/アメリカ
原題:Top Gun: Maverick
配給:東和ピクチャーズ
アメリカ海軍パイロットのエリート養成学校、通称「トップガン」に伝説のパイロット、マーヴェリック(トム・クルーズ)が教官として戻ってくる。
父親と親友を空で失った過去を持つ彼の型破りな指導に、訓練生たちは戸惑い反発。
その中には、かつてマーヴェリックの相棒だったグースの息子ルースター(マイルズ・テラー)の姿もあった。
評判も良く大ヒット記録を飛ばしている本作は観る前から面白さを確約された安心映画で、鑑賞後に絶望でひれ伏すことはないだろうと容易に予測出来る。
超ド直球な王道ハリウッド映画を見せつけてくれるだろうという期待と、それを映画館の大型スクリーンで体感したい気持ちが劇場へと足を運ばせた。
夕焼けに浮かぶシルエットに『トップガン』お馴染みの「Top Gun Anthem」の曲が流れると、そりゃテンションが上がる。
36年前の前作では初々しかったトム・クルーズが本作では哀愁を漂わせながらマーヴェリックを演じている姿は、更なるカッコ良さが増していた。微笑む顔に男の生き様が投影され、映画の世界で試練をくぐり抜け栄光を掴んできたトム・クルーズの人生の重みと深さがマーヴェリックと重なるのだ。
役者が演技だけでは演じ切れない人間としての魅力を、トム・クルーズが自身の人生において身に着けてきたからこそ演じられる現在のマーヴェリック。
哀愁を手に入れたトム・クルーズと前作での相棒グースの息子ルースターとの出逢いにより、まるで「ロッキー」シリーズのスタローンとアポロの息子の関係を思い出す。ロッキーのライバルであり友だったアポロが亡くなり、数十年後にアポロの息子とボクシングで繋がっていくように、マーヴェリックとルースターは空の上で繋がっていく。
前作のヒロインのチャーリーは残念ながら続編には登場しない。30年以上経ってもカッコイイままのトム・クルーズに比べて、現在のチャーリーの容姿に難があるのだろうと推察する(かなり失礼だが)。
続編ではジェニファー・コネリー演じるペニーをヒロインにして、新しいラブロマンスも描くことに成功。
また前作でマーヴェリックのライバルであるアイスマンを演じたヴァル・キルマーは劇中で「声が出しづらい」役柄であったが、実際にヴァル・キルマーは喉頭がんを患い声を喪失している。その実際の背景をも続編では活かして二人の友情を描いたのである。
前作を踏まえながら、30年以上経過した現実での状況と照らし合い考慮して、結果的に最高の続編が生まれたのだ。
劇中では数々の奇跡が起こるが、本作そのものが奇跡の積み重ねで出来た作品である。
前作の感想で「トム・クルーズを中心に動いている映画だ」と述べたが、本作もトム・クルーズ中心に世の中が回っている。
本作に登場する全ての人たち、ピンチや困難等、それら全てがトム・クルーズをただただカッコ良く見せるための材料に過ぎない。
劇中で何度も「死んでいてもおかしくはない」目に合いながら、ちゃっかり生きているマーヴェリック。あの絶対的ピンチの連続では悲劇が待ち受けているはずだが、悲劇を間逃れ生還出来たからこその美談。これら全てがトム・クルーズをカッコ良く見せるために用意されていた結末なのだ。
ミッションを遂行してルースターと共に生還。ペニーと二人での飛行シーン。とてつもなく爽快感溢れるハッピーエンドで幕を閉じる。
飛行シーンの迫力、疾走感と臨場感、前作と30年以上経った現実を上手く絡めた物語、トム・クルーズの人間力、鑑賞後の爽快感、全てが最高の映画であった。
コロナ禍で本作の公開を遅らせた理由がわかる。配信ではなく劇場で体感して欲しい映画なのだ。IMAXで観れば更なる興奮が味わえるだろう。是非とも公開中に劇場で楽しんで欲しい作品である、といったところで「カット、カット」。
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