昨年、日本でも超話題になった大人気の『梨泰院クラス』全16話を、やっと観た。
『梨泰院クラス』 大手飲食店に一人の男が立ち向かう。 15年をかけた壮大な復讐劇。 監督:キム・ソンユン 出演: パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョン、クォン・ナラ、アン・ボヒョン、イ・ジュヨン、キム・ドンヒ |
ポータルサイトDaumの、韓国の人気同名WEB漫画をドラマ化。
原作者のチョ・グァンジンが直接脚本を手掛けた。
ドラマ『雲が描いた月明り』、『恋愛の発見』のキム・ソンユンが監督。
梨泰院の街で新しい挑戦を始める人物パク・セロイ役を俳優パク・ソジュンが演じる。
SNSスターでパワーブロガー、神がくれた頭脳を持つ高知能ソシオパスのチョ・イソ役をキム・ダミ。
飲食業界の大手企業「チャンガ」の会長チャン・デヒ役をユ・ジェミョン。
元「HELLOVENUS」のメンバーで女優クォン・ナラが、パク・セロイの初恋相手のオ・スア役に扮する。
韓国のケーブルテレビ史上7位の高視聴率で最終回の視聴率は16.5%を記録。
信念を貫け!と父親に教えらて生きて来た誰よりも正義感が強いパク・セロイは、高校3年生の転校初日に虐められてる同級生を助けるため、大手飲食店・長家(チャンガ)グループの会長の息子・チャン・グンウォンをを殴ってしまう。
学校に来た長家の会長は、土下座して謝れば許すと言い放ったが、長家の部長を務める父親は、絶対謝らないと言った息子を褒めて、自ら会社も辞めてしまう。
セロイの父親は自分の店の準備を始めたが、ある日、グンウォンはセロイの父親をひき逃げする。
加害者の車を覚えていたスア(同級生)から聞いたセロイは、怪我で入院していたグンウォンを殴りつけて刑務所に入る事になる。
出所したセロイは、成功を掴もうとソウルのなかでもひと際ホットな街・梨泰院(イテウォン)で小さな飲み屋を開店して、長家グループ相手に無謀ともいえる戦いを仕掛ける。
Netflixで全16話を観たが、非常に面白かった。感想を一言で言い表すには難しく、色んな感情や想いを抱かせてくれる作品であったので、少し分解しながら感想を記していく。
何といっても、このドラマではそれぞれの役者の表情がイイ。
表情がこれほどまでに雄弁であり、かつ視聴者の心を揺さぶらせる効果があり、物語に感情移入させていく。
表情がリアリティーを生み、それぞれの登場人物の心が浮き彫りになる。
悪役は徹底的に悪役に徹して、その表情からの存在感と「反逆することへの恐怖」を与えて、さらに主人公側へと感情移入させるのだ。
何といっても、僕の中での最優秀表情賞は会長の息子であるグンウォンだ。
これほどまでに心の動きを表情に出して、臆病でありながらも強者であろうとした人物像を上手く演じた功績は凄い。
最も臆病であり、バカであり、可哀相な人物である。
『梨泰院クラス』は、それぞれの役者の表情があまりにも素敵に映し出されていて、視聴者の心を捕らえて離さないのだ。
このドラマをグルグルと振り回しているのは、グンウォンである。
いじめをするグンウォンがキッカケでセロイとの対立が勃発する。
セロイの父親をひき逃げするグンウォン。
そして、セロイに半殺しにされて、「自分のしたことの罪の重さ」に反省したグンウォンは、ここで「生まれ変わる」チャンスであったが、会長によって悪の道へと突き進むようになる。
残念。ひき逃げの罪を償っていれば、セロイに復讐されることもなかっただろう。
長家の跡取りとしては、あまりにも無能な仕事っぷりで周囲からも信頼は薄く、おまけに暴行事件まで起こしてしまう。
さらに過去のひき逃げ事件の自白を音声録音されてしまって、会長にも見放されて刑務所に送り込まれてしまう無能っぷり。
大好きなスアからは激しく嫌われて、弟からも軽蔑されて、常に会長の足を引っ張り続けて、会社の株を何度も暴落させて、絶望的な人望のなさの中で、更に悪への道へと突き進んでいく。
刑務所を出所後は、今度はセロイをぶっ殺そうとしているのだから、もう救いようがない。
だけど頭が悪いから、全然上手くいかない。
『梨泰院クラス』のドラマをいつも動かしているのは、グンウォンなのである。
グンウォンが優秀で正しい行動をとっていれば、こんな騒々しいドラマの展開にはなっていなかったのだ。
さて、非常に面白かった『梨泰院クラス』だが、気になったツッコミどころを言っていこう。
先ずは、あまりにも多い偶然である。
スアとの最初の出逢いも偶然で、その後に高校の同じクラスになったり、セロイの父親とスアが親しかったり。
ハロウィンパーティーが開催されている梨泰院でバッタリと偶然の再会をするセロイとスア。
セロイとイソとの最初の出逢いも、イソが街の中で揉めているところを止めに入って、その後に何故かイソがバイクから放り出されて飛び込んだ先でセロイがキャッチするという絶対にありえない意味不明な再会。
ドラマでは何度も何度も偶然が頻発して、街の中を歩けばセロイとスアが偶然に出逢い、スアが車の信号待ちでセロイに電話すれば目の前の横断歩道を歩くセロイ。
とにかくもう偶然ばかり起きて、都合よく物語が進められていくのだ。
『梨泰院クラス』の良いところは、大手飲食店の長家を相手に、一人の男が「復讐心」で自ら飲食店を開業して立ち向かっていくところにある。
12話まではセロイの小さなお店のタンバムが大手の長家と戦っている物語が最高に面白かったのだが、13話以降から「4年後」に話が飛んで、「IC」というでっかい自社ビルを構える始末。
小さなお店のタンバムでの物語が面白かっただけに、こんなデカい自社ビルを見せつけられると僕の感情も追いつけない。
またあれだけ恐ろしかった長家の会長が余命わずかで弱っているというのだから、困ったものだ。
すぐに「ゲホッ、ゲホッ!」と辛そうに咳き込み、「こんな弱っているヤツを叩きのめしてもなぁ」という印象を与えてしまう。
もっと絶対的に揺るがない一番恐ろしい状態で、長家が絶頂期である時に会長を叩きのめさないと意味がない。
弱っていて、放っておいても勝手に死んでしまうヤツに復讐したところで爽快感がないのだ。
更には僕が終始、一番懸念していた出来事が遂に起こってしまうのである。
飲食業での復讐や対決を見たかったのであるが、遂に暴力事件、誘拐、そして殺人にまで手を染めて対決をさせるという物語展開は凄くイヤだったのだ。
もう、こうなってくると飲食業とか関係ないし、「復讐」「因縁」「対決」という面白い設定が、ただの犯罪による「解決」では何もかも台無しになってしまうのだ。
例えば、日本の大人気ドラマ『半沢直樹』で「倍返しだ!」と言いながら人を殺害したりしたら台無しである。ビジネスによる復讐劇が面白いのであって、『半沢直樹』で暴力行為や誘拐、殺人などでの「解決」は全く望んでいないのである。
僕にとっては『梨泰院クラス』も飲食業だけでのバトルを期待していたのだ。
面白かった、面白かった『梨泰院クラス』だけに、「そっちの話の展開はやめて~!」と叫びたくなる。
あと、全然関係ないけど、すぐにデカいサングラスをかけてカッコつけるのも笑えた。
4年後、ICのビルに向かうセロイもデカいサングラスかけていたし、海外から帰国した会長の次男もデカいサングラスかけていたし、イソもカッコつけてデカいサングラスかけていたなぁ。
また、ほとんどの登場人物が童貞と処女で構成されている物語も無理を感じた。裏で他の人と肉体関係を持っていたとも思い難い。
ともあれ全16話、非常に楽しみに面白く観させていただきました、ってなところで「カット、カット」。
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