評判がイイ映画だったので、『THE GUILTY ギルティ』を観た。
『THE GUILTY ギルティ』 見事なる脚本と演出。 聴覚で想像力を掻き立てるワンシチュエーションもの。 監督:グスタフ・モーラー 出演:ヤコブ・セーダーグレン イェシカ・ディナウエ ヨハン・オルセン |
第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど話題を呼んだ、主人公が電話の声と音を通して誘拐事件の解決を図ろうとするデンマーク製の異色サスペンス。
電話からの声と音だけで誘拐事件を解決するという、シンプルながらも予測不可能な展開で注目された。
本作がグスタフ・モーラーの長編初監督作。
ドラマシリーズ・北欧サスペンス『凍てつく楽園』などのヤコブ・セーダーグレンが主人公を演じる。
イェシカ・ディナウエ、ヨハン・オルセン、オマール・シャガウィーらが共演。
2018年製作/88分/G/デンマーク
原題:Den skyldige
配給:ファントム・フィルム
警察官のアスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)はある事件を機に現場を離れ、警察官として一線を退いて緊急通報司令室のオペレーターとして勤務していた。
交通事故の緊急搬送手配などをこなす毎日を送っていたある日、今まさに誘拐されている最中の女性から通報を受ける。
車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件を解決に導いていく。
ワンシチュエーションで繰り広げられる見事な脚本と、それを飽くなき演出と役者の演技で、次なる展開の焦燥感を掻き立てる秀逸な作品。
このアイデアを浮かんだことで映画の勝ちは見えていただろが、一歩間違えれば爆死である。
ワンシチュエーションでどうやって観ている者を映画の世界に引き込むか。そして安っぽい映画だと思わせずに、通話の「声や音」だけで、どうやって観ている者の想像力を膨らませていくか、そこにはあらゆる工夫や計算が成されていたであろう。
役者の演技、表情ひとつで、緊迫した空気を作り込み、冷静に言葉を投げかけているかと思えば、時に感情を露わに激高する。
男の苛立ちが、男の葛藤が、静かに激しく、やり場のない怒りが精神を圧迫する。
今まさに自分の耳元で繰り広げられている誘拐事件を何とか食い止めようと必死になるが、その事件と向き合うことで、自分自身の抱える問題と対峙して、自分と向き合い、自分の生き方を見つめ直す男の苦悩に、観ている者は胸を打たれるのだ。
また非常に素晴らしかったのは、この映画での「沈黙」である。
聴覚によって刺激される誘拐事件が、聴覚を静寂の間に閉じさせて、男の「沈黙」した表情を映し出す。
その沈黙が男の心情を表すことにおいて、言葉よりも雄弁であることには違いない。
誘拐事件と自分の抱えている問題と、その二つが決着を迎えていく時、安堵と決意の念が男を静寂へと包み込む。
聴覚に訴えかけてくる映画は、とてつもなく想像力を掻き立てられ頭の中に映像を映し出させてくれたのだ、といったところで「カット、カット」。
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