ビートたけしさんの画集を購入したのだ。
『アートたけし』
オフィス北野 (監修) |
かれこれ6年程前に銀座で開催されていた『アートたけし展』に行ったことがある。
当時は購入しなかった画集だが、今回『アートたけし』を再度堪能したくて購入に至った。
世の中には絵の上手い人が沢山いて画家を名乗る人たちの技術力を前に「絵を描くことは難しいものだ」と認識した後、自分で絵を描こうなんてことに絶望して夕暮れの丘の上で途方に暮れるわけだが、ビートたけしさんが描く絵を見た時に「表現は自由なんだ!!」と丘の上から夕焼けに向かって叫ばずにはいられない。
たけしさんは目の前にあるものを描くわけでもなく、写真を見て描くわけでもなく、イメージで描くらしい。
たけしさんの頭の中での発想を自由奔放にキャンバスに表現する。
例えばパンダを描く時にパンダの写真を見ることはないので、「どこが白で、どこが黒で」とわからなくてもイメージで描く。描き終えてから実際のパンダを確認すると、全然違っていたりするらしい。
そんなエピソードを知ると何故だか勇気づけられるのだ。パンダを描く時に必ずしも実際のパンダを確認しなくてもイイのだと思える。
正しいパンダを見たいのであれば写真を見ればイイわけだから、アートは自由に表現してイイのだ。
たけしさんが監督した映画『HANA-BI』の劇中では、幾つかのたけしさんが描いた絵が使用されていて、その中でも天使を描いた絵が美しくて好きである。
『HANA-BI』
監督:北野武 |
映画で使用されていた絵が多数掲載されている画集も持っていて、あらためて見てみたが『アートたけし』とは違ったタッチのものが多く、点描の美しい絵等も味わい深い。
『アートたけし』の画集は、かなりコミカル要素が強いことが確認出来る。
ユニークで滑稽な人物たちが描かれ、どれだけ着飾っていても「人間って間抜けだなぁ」と面白おかしい気持ちになってしまうのだ。
無表情な顔から飛び出した目や口、格好つけた男と女とイカした車、連れた愛犬が糞をしている。
人間を斜めから俯瞰で見た時に、真面目な顔をして悶々と生きている姿が、笑える一コマの絵になる。
間抜けな人間たちから何故か人生の真理を教えてもらえるような、たけしさんが描いた絵だと知っているからなのか、人生を達観した人が描いた絵のような不思議さがある。
純粋無垢な子供の絵とは違い、ピカソとも違う、たけしさんの頭に浮かんだイメージが描かれた唯一無二の世界なのだ。
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