藤原竜也主演の『鳩の撃退法』を観たのだ。
『鳩の撃退法』 現実と虚構が交錯した物語。 津田の主観と、作られた想像。 監督:タカハタ秀太 出演:藤原竜也 土屋太鳳 風間俊介 |
『ジャンプ』などの原作で知られる直木賞作家・佐藤正午のベストセラー小説を藤原竜也主演で映画化。
『鳩の撃退法』 佐藤 正午 (著) |
『ホテル ビーナス』のタカハタ秀太が監督を務め、『見えない目撃者』の藤井清美と共に脚本を担当。
小説家・津田を藤原、津田に翻弄される担当編集者・鳥飼を土屋太鳳が演じる。
その他に風間俊介、西野七瀬、豊川悦司が出演。
2021年製作/119分/G/日本
配給:松竹
都内のバーで、直木賞作家の津田伸一(藤原竜也)は、担当編集者の鳥飼なほみ(土屋太鳳)に執筆途中の新作小説を読ませていた。
津田の体験を基にした新作に魅了される鳥飼だったが、大量の偽札や一家失踪事件、裏社会のドンといった話を聞くうちに、小説の中だけの話とは思えず困惑する。
鳥飼は津田の話を頼りに、この小説が本当にフィクションなのか検証を始める。
予備知識なしで内容を知らずに観ていると、なるほど、小説家の津田が書く小説と現実世界が交錯した物語であることが理解出来た。
「偽札」と「一家失踪事件」が主なるテーマで、それを軸に色んな枝葉が付けられている。
一体どこからどこまでが現実で嘘なのかが、この映画を考察する魅力であり醍醐味であると思うが、「別にどっちでもイイやん」と言ってしまえば身も蓋もない話なのか。
バーで働く津田が実際に体験した昨年の出来事を基に小説を書いていくわけだが、「フィクションが混じって当然」で「全てリアルなわけがない」のは当然のことである。
全てが津田の主観で語られた物語ならば、まだ理解出来るが、「津田自身の目で見ていない」光景まで描写されているのだから、フィクションが混じって当然ではなかろうか。
例えば、秀吉夫婦の二人の会話は、実際には秀吉夫婦にしかワカラナイ内容であり、どんな会話が交わされたのかは津田の想像でしかないのだ。
秀吉が女性スタッフから電話を受け「給料を前借り」するくだりだって、秀吉と女性スタッフしか知らない内容だ。
また倉田に拉致された秀吉が車中で両手をパンパン叩いたり、妻の浮気相手がボコボコにされたりする光景は、津田自身の目で実際に見た光景ではない。
津田が秀吉という男に喫茶店で出会ったこと。津田が偽札を手に入れた状況と、偽札を手にしてしまったことで倉田という男に追われていること。幾つかの自分が体験した事実を基に、津田の想像が絡まっているだけなのである。
津田は倉田という男を実際の目で見たこともないので、劇中に出て来る倉田は全て津田の想像に過ぎない。ラストで秀吉が乗った車に倉田が座っていたが、津田がそれを倉田だと認識出来るはずもない。
現実と虚構が入り混じった物語がウリである作品で、それらを考察する楽しみは理解出来るが、個人的には「どっちでもイイやん」と思い、「全部ホントでもイイし、全部ウソでもイイ」とサイテーなことを思ってしまう。そんな感想を持つ僕が「本当の気持ち」を言っているのか「ウソの気持ち」を言っているのかだって、実際には僕本人にしかワカラナイことではないか。
原作小説を読みこんだり二度三度作品を観返せば、もっと深く分析した解釈が出来ると思うが、「どっちでもイイやん」、といったところで「カット、カット」。
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