中田秀夫監督のホラー作品『“それ”がいる森』を観たのだ。
『“それ”がいる森』 バレバレなのに“それ”の正体を引っ張り過ぎ。 実は凄く弱い“それ”。 監督:中田秀夫 出演:相葉雅紀 松本穂香 上原剣心 |
森を舞台に“それ”と呼ばれる得体の知れない何かが恐怖を描く、相葉雅紀が主演を務めたホラー。
松本穂香、江口のりこ、上原剣心(ジャニーズJr.)らが共演。
『リング』『事故物件 恐い間取り』等の中田秀夫が監督。
2022年製作/107分/G/日本
配給:松竹
田舎町で農業を営む田中淳一(相葉雅紀)のもとに元妻・赤井爽子(江口のりこ)と暮らす小学生の息子・一也(上原剣心)が東京から訪ねてきて父子は共に暮らす。
その頃、近くの森で謎めいた現象が多発。
淳一が暮らす町でも住民の不審死や失踪が続発していて、間もなく父子も得体の知れない存在“それ”を目撃する。
公開当時、結構酷評されていた本作は、逆にどれだけ酷い作品なのか気になってしまった。監督はホラー界の巨匠・中田秀夫監督なので、「本当にそんなに酷いのか?」と半信半疑である。
よく観ているYouTubeチャンネル『都市ボーイズ』の「“それ”がいる森・評」は凄まじく酷かった。申し訳ないが酷評動画は最高に面白かった。
本作を観てみたが結論から言って、「そこまでは酷くなかった」。
残念な点は多々あるものの、メチャクチャ叩くレベルではない。
オープニングでパンサーの尾形が登場した時には「え?」と思ったのは事実。「一番最初の大事なシーンでお笑い芸人起用するかね?」とホラー映画のオープニングで芸人は適していない。
“それ”とシークレットにしている割には、「宇宙人やろ!」と早い段階で気付いてしまうレベル。
パンサー尾形が襲われてしまうシーンも「変な青っぽい液体」を見せてしまっては、「この世のものではない」と勘付かれてしまうではないか。せっかくデカデカと「熊注意」の看板を掲げているのに、何の意味も持たない。「熊?」と思わせた方がイイのに、パンサー尾形が襲われた時も「宇宙人か?」と気付かれる位に見せてた。
パンサー尾形が襲われるシーンは「物音だけ」で表現していれば「熊に襲われた?」と思わせることも出来たのに、変な液体と変な生物をチラつかせたことで「宇宙人?」と呆気なく冒頭から勘付かせてしまったのだ。
「熊」でなければ、「幽霊かな?」と他のモノを連想させるような表現にして欲しい。
子供たちだけで森の中に入り「未知なる金属の物体」を目撃して、「何、この鉄の塊?」と言ってしまう。何故か「UFOだっ!」とは思わないのだ。フツー、あのカタチの物体を見たら「UFOだっ!」と思ってしまいそうだが、UFOと決して思わないところが謎である。空を飛んでいないので「鉄の塊」にしか見えなかったのかな。
とにかく宇宙人の姿を見ても「宇宙人だ!」とはならず、「バケモノだ!」となる。正体がバレバレにも関わらず、一向に“それ”は「宇宙人だ」と認識されない。
いわゆるメディア等で目撃する「宇宙人」の姿をしているにも関わらず、「宇宙人」と思おうとしないのは、もしかしたら宇宙人によって記憶や脳をコントロールされているのかもしれないと深読みしてしまう。
学校も警察も「宇宙人だ」なんて話は誰も信じてくれず、ずっとバカみたいに「熊」だと思い込んでいる。
せめて「宇宙人ではないと思うが、熊ではなさそうだ」と言う見解にはならないのか。
宇宙人であることを認めないまま、引っ張って引っ張って、結局は宇宙人。
しかもこの宇宙人、高速で移動するかと思いきや、肝心な相葉くん親子を襲う時だけは超スローな動きになってしまう。
更に超絶弱い。植物性の細菌がカラダに付着しただけで大袈裟に苦しみ出す。「そんなに猛毒なの?」とこっちが混乱してしまう。危険がいっぱいな地球に来るべきじゃないよ。
UFOに乗って地球に攻め込む科学力があるのに、何故か人間をさらう時は道具や武器も使わず自分たちの肉体を使って捕獲しに行く原始的な方法。
宇宙人がUFOに乗り逃げていくシーンもコントのCGみたいな感じ。エンディングの日中にUFOが去っていくシーンなんかは明らかにギャグ。
相葉くんの説明台詞が多いことも気になった。状況をイチイチ台詞で説明する。
「それ程、酷くなかった」と言いながら、かなり酷評してしまったが、かなり悩ましい作品であることは間違いない。
もうちょっとアプローチを変えていけば、そこそこ面白くなりそうな作品ではあった、といったところで「カット、カット」。
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