伊藤潤二先生のコミックを買ったのは初めてのこと。興味がわいて読んでみたのだ。
『伊藤潤二自選傑作集』
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伊藤潤二先生の漫画を読んだことがなく入門編として「自薦傑作集」を購入。
短編を集めた本書は描き下ろし新作読み切りを含めた10編の物語で形成されている。
その全てはバラエティーに富んでおり、どれもが想像力に長け驚きと共に魅了される。
『ファッションモデル』はキャラクターデザインが秀逸で、ファッションモデルとは一番遠いとも思われるキャラクターを描いている。
ただ身長が高くてスタイルが良いだけで風貌は幽霊か妖怪かバケモノにしか見えない。しかしファッションモデルの女性は「人間として扱われ、モデルとして扱われている」不気味過ぎる違和感。
見た目で敬遠するのは宜しくないが余りにも異質だ。こんな女性に付きまとわれたら怖くて仕方ない。
『首吊り気球』も最高だ。
自分の顔や知り合いの顔の気球が空をふわふわ飛んでいる。そんな状況に出くわしたら心臓停止必至。もう免れない。
『あやつり屋敷』は好きなお話。奇妙な雰囲気が非常に良い。家出した兄貴が成功して現れたが、家族全員あやつり人形になっている。先の展開が気になるシュールな世界観に酔いしれる。
『ご先祖様』も好き。発想が奇怪過ぎて嬉しくなってしまう。頭部にご先祖様が繋がり連なっているなんて、最高にバカバカしく最恐に怖い。
彼女が記憶喪失になった設定も良い。彼女側に何かしらの秘密があるのかと思ったら、彼氏側に重大な秘密があったという。
『グリセリド』は気色悪い。非常に気色悪い。「油まみれ」であることが無性に気持ち悪い。
ってか、こんな焼き肉屋行きたくないわっ!親父が脂ギッシュでベットベト。不衛生にも程があるやろ。
家の中が油でベトベト。よく不満を感じながら、こんな場所に住めるよな。自分なりに換気をよくしようとか、油を落とそうとか努力はしないのか。三角座りしてベトベトであることを受け入れ嘆いている。
伊藤潤二先生の作品には異様な設定と斜め上を行く発想が読者を虜にする。
ハッピーエンドにはならないオチと、この先もまだまだ続きそうな怪異を予感させる後味の悪さが逆に味わい深く想像力を掻き立てられる。
日常の中に潜む不気味な物語が、いつか自分も体験するのではないかと思わせる妙なリアリティーが脳裏にこびりつく。
まるで実際にあったノンフィクションのように、不気味な世界に迷い込んでしまうのだ。
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