竹久夢二美術館と隣接する弥生美術館で開催されている『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展』へ。
東京都文京区弥生に位置して、向かいには東京大学があった。
いざ、会場へ。
墨と筆を用いた一発勝負の森本美由紀さんのファッション・イラストは実にスタイリッシュだ。
無駄な線を省き必要な線だけを流れるような筆さばきで表現した、女性のファッショナブルな姿が印象的。
憧れの対象になるような自信を持った女性たち。凛と立つ姿は女性ならずとも男性が見てもカッコイイ。
手足が長く8頭身の彼女たちは、そこに生きているように確かに存在する。
真正面、後ろ姿、真横からも最高のショットを捉え、鑑賞者の心を惹きつけて射止めるのだ。
カラーでの作品もやはり美しく、その美的センスに圧倒される。
無駄のない洗練されたイラストは、ポスターのデザインにも最適。
エンタメ系の仕事も手掛け、ピチカート・ファイヴのCDジャケットのイラストも描いている。
その抜群のセンスは一目瞭然。
森本美由紀さんに依頼が舞い込むのが瞬時に理解出来る作品の数々は、作品を依頼する側のセンスも評価されてしまいそうだ。
「森本美由紀さんを起用するなんてセンス良いねぇ」と周囲に褒められるだろう。
一枚のイラストの持つ凄さ。また複数を並べた時に見える有無を言わせない凄さは、展示会ならではの発見ではないだろうか。
元々、僕は森本美由紀さんのことをよく知らなかったのだが、中山美穂と織田裕二が主演の『波の数だけ抱きしめて』のパンフレットに描かれたイラストは知っている。
僕たちの生活の中に、どこかで森本美由紀さんのイラストに触れ、溶け込んでいるのだ。
ひとつひとつが非常に魅力的で想像力が掻き立てられる。
森本美由紀さんは2013年10月に肝臓がんで54歳の若さで、この世を去ったという。
強烈な才能とセンスで世の人たちを魅了して、「女の子のなりたい」憧れを描き続けた。
土曜日の弥生美術館には沢山の女性客が鑑賞していて、羨望の眼差しで黙って森本美由紀さんの作品を堪能していた。
シンプルなイラストでありながら、その余白からエレガントな空気感が伝わってくるような、花の心地良い匂いを運んでくれ優しいメロディーが流れていく。
今回、弥生美術館に森本美由紀さんの企画展のタイミングで初めて足を運んだのだが、森本美由紀さんの軌跡を辿ることの出来る貴重な展覧会であった。
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