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『天使鬼』

の生えた鬼、そいつは天使鬼。

左手では赤ん坊を抱きニコニコとあやして、右手では金棒を持って人をぶっ叩いている。

 

天使鬼

 
天使なのか鬼なのか、どちらでもなくて、どちらでもあるのかも。

それはまさしく俺たち人間のようだ。

俺たちは天使のようでもあり、鬼のようでもある。

良いこともすりゃあ悪いこともする。

優しくもすれば意地悪もする。

正直でいたり嘘をついたり。

人間はとても曖昧な生き物だ。

自分自身さえもよくわからねぇのに他人なんて信用できやしねぇ。

赤ん坊を可愛がりながらも絶えず誰かと争っている。

愛の言葉を囁きながらも陰口ばかり叩いてる。

人間は素晴らしいと賛美したり人間は愚かだと卑下したり。

矛盾を抱えて俺たちは生きている。

好きが過剰になるから嫌いにもなる。

地球を大事にしようと言いながら排気ガスをまき散らしてドライブ。

自然破壊はやめようと謳って休日はゴルフ三昧。

一日一善を教えられながら困っている人を見て見ぬふり。

どれだけのキレイごとを吐いてみても悪口を言って盛り上がる。

生まれてゴメンナサイ。

死んでも詫びたことにはならない。

アーメン、オーメン、麺類は大好きです。

それはまるで鬼の目にも涙。

意味がワカラナイ。

誰かを想う気持ちも憎しみも持っている。

好きも嫌いもある。

正義の味方か悪党か、一人の人間の中に両者共存しているわけだから、ケンカ両成敗。

「いい人だと思っていたのに」ではなく、別の顔もあるってこと。

「イヤな人だと思っていたけど」ではなく、別の顔もあるってこと。

顔で笑っていたって心で泣いていることもある。

顔で笑っていたって心で怒っていることもある。

顔で笑っていたって心で嫌っていることもある。

アンバランスのようでバランスを保っている。

毒も薬もなきゃならぬ。

善玉菌も悪玉菌もなきゃならぬ。

筋肉も脂肪もなきゃならぬ。

どちらかだけなんてことはないのだ。

自分が勝手に理想を描いた絵空事。

自分が現実だけしか直視していない世間知らず。

優しさも冷たさも両方を併せ持つものだと割り切ってしまえばいい。

泣いている赤ん坊がいたらあやしてあげよう。

気に入らないヤツがいたら金棒でぶん殴ってやろう。

この世の中で聖人君子のような人はいないのだから。

長所も短所もあるように、良き面も悪しき面もあるものだ。

天使鬼はそんな生き物の象徴だ。

翼を生やした天使鬼が空を飛ぶだろう。

空から人の世を見下ろして「人間も同じさ」とケタケタ笑いながら空を飛ぶのさ。

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