『火花』を観たのだ。
又吉先生の芥川賞受賞の小説を映像化した作品。
小説はまだ読んでないが、『火花』のNetflixドラマの予告編を観ていたら面白そうだったので全10話を観た。
個人的な感想を書いてネタバレもあるので、まだ観てない方はこの記事読まないでネ☆彡
『火花』 監督:廣木隆一,白石和彌,沖田修一,久万真路,毛利安孝 出演:林遣都、波岡一喜、門脇麦、好井まさお(井下好井)、村田秀亮(とろサーモン)、 菜葉菜、山本彩(NMB48/AKB48)、徳永えり、渡辺大知、高橋メアリージュン、渡辺哲、 染谷将太、田口トモロヲ、小林薫 ほか |
第153回芥川賞を受賞、累計発行部数300万部という異例の大ヒットをした又吉直樹の小説『火花』をNetflixでオリジナルドラマ化。
主人公の芸人・徳永役には『バッテリー』で日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ各賞を獲得、 実力派へと成長を遂げた林遣都。
神谷役は『クローズZERO』シリーズなどの映画、ドラマで活躍する 演技派・波岡一喜。
神谷の彼女・真樹を演じるのは『愛の渦』の若手演技派・門脇麦。
全10話の総監督は『ヴァイブレータ』などで海外でも作家性が高く評価される廣木隆一が務める。
売れない芸人の徳永は営業で行った熱海の花火大会で、先輩芸人の神谷と電撃的に出会う。
神谷に強く惹かれた徳永は弟子入りを申し出る。
神谷は天才肌であり人間味に富んだ人物で、神谷は自分の伝記を書くことを条件に徳永を受け入れる。
以降、徳永と神谷は頻繁に会っては酒を酌み交わしては、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。
吉祥寺の街を彷徨いながら様々な人々と触れ合い、時間を共有する二人だったが、それぞれの歩みは次第に決定的に異なっていくようになる・・・。
カメラの長回しでの歩くシーンや走るシーンが多かった。
漫才師の人間ドラマを描いた作品の中で、歩くシーンと走るシーンが漫才のリズムを感じさせた。
漫才によるリズムの強弱みたいなものを、歩くシーンや走るシーンで表現したかのような印象があった。
紳助さんの『紳竜の研究』というDVDで紳助さんが漫才師を志す人たちに言っていたが、「漫才の練習を歩きながらやってみぃ」「それが自分たちの漫才のリズムになるから」と。
まさに『火花』のオープニングは歩きながら漫才の練習をしていたのだ。
ワンカットでの長回しが面白い。
主人公の背後をカメラが追いかけて、アパートの中へと主人公と一緒にカメラが入っていく。主人公は自分の部屋へと入るが、カメラはさらに歩き続けてアパートの外に出てアパート全体の外観を映す。アパートの外側から主人公の一階の部屋、そして同じアパートの二階に住むミュージシャンの部屋の暮らしを映し出す。
小説は読んでないが、小説では主人公の内面の心理描写を描いていたんじゃないのかな?
心理描写をセリフではなく、映像で表現していた感じがする。
お笑い芸人という題材を扱いながらも、とにかく切ない。笑っていても切ないのだ。
そして映像がとにかく美しい。
第一話の花火が打ちあがる中で『火花』のタイトルが浮かびあがってくるところなんて、すごく美しかった。
キャスティングした人、誰??目の前で「めっちゃエエやん!」って言いたい。
主役の林遣都さんの他の作品は観てないが、『火花』の徳永役は又吉さんにしか見えなかった。
話口調が又吉さんだった。
その辺は本人が意識して演じていたのか?
漫才もうまかった。最終話での漫才は圧巻。
さらにキャスティングの良さは、脇役で出てくる役者さん。
合コンで徳永に好意を抱いていた女性。
コンビニバイトで深夜に一緒に働く若い男。
神谷が二度目に転がりこんでいた部屋の女性。
たまらなく良かった。リアリティがあって良かった。
コンビニのバイトの男も、すげームカつくんだけど演技がめちゃうまい。あーゆうヤツいるもん。
ドラマや映画で美男美女ばかりキャスティングされてると、すげー見る気なくす。リアリティがない。
自分の身の回りに、ジャニーズ系の男やアイドル系の女の子がわんさかいるなんて不自然すぎる。
『火花』はいい感じのキャスティングだった。
残念だったところは、業界人達がうさん臭いヤツらばかりだったこと。
テレビ局のプロデューサーとかって、あんなにうさん臭いもんなのかね?
テレビ局の人たちは、イヤな感じの人たちの集まりだった。
林遣都さん扮する徳永は、神谷という男をお笑いの師匠として慕うのだが、又吉さんが憧れる芸人像なのかな?と思った。
又吉さんはプライベートで千鳥の大悟さんとよく一緒に行動していると『アメトーーク』で言ってたが、徳永と神谷のようにも見える。
又吉さんは物静かな印象があり、面白い発想や人と違った角度からモノを見る事が得意な人。
神谷は昔ながらの芸人気質な男で、オモシロイということが何でも最優先であり、破天荒で周囲に媚びたりしない。どこか破滅型でもある。千鳥の大悟さんも同じニオイがする。
徳永と神谷は正反対なタイプ。
徳永は芸人ならば本当は神谷のように生きたいのではないだろうか。
しかし僕は神谷という男が面白いようには見えなかった。いや、よくわからなかった。
僕は「面白い人」というのは、すごく「優しい人」だと思っている。
芸風がどうであれ、絶対に優しいはずなのだ。
優しい人というのは相手のことを気遣い、相手が喜ぶことをしてあげる。
優しくない人は、そういうことが全然わからない。
面白い人は何を言えば相手が笑うのか?相手のことを考えて察知して人を笑わせる。これは優しい人間じゃないと出来ない。
優しくない人間はつまらない。
神谷はどっちだろう??って思った。
神谷の優しいところや繊細な部分も、もちろん描かれているのだが・・・。
破天荒の内側には計算つくされたものがないと、ただの不愉快で終わったりする。
優しい人は破天荒に振る舞っていたり毒舌を放っていても、実はちゃっかりと笑いを生んでいるものだ。
『火花』に出てくる女性に悪女はいない。
みんなみんな、とにかくイイ女なのだ。
徳永の髪をタダで切ってくれる美容師の女性。
神谷と同棲している女性。
徳永の漫才コンビの相方・山下の彼女。
神谷が二度目に一緒に住む女性。
女性がとにかく皆、優しくて健気に男を支えてくれている。
売れない芸人を支えてくれている女性ってみんな、こうなの??って思ってしまう。
それとも又吉さんの女性を映し出す目がそういったものなのか?
僕は女って、もっとコワイもんやでぇって思ってる。
男の方がバカで純粋で、女は大体性格悪いって思ってる。だから僕は女性を信じない。
『火花』に出てくる女性は、かなり女性を美化している。
1000人に1人位は、そんな女性もいるかもしれない。
だけど登場人物、皆があんなイイ女なわけがない。
又吉さんはまだ女性のコワさを知らないのかもしれない。
芥川賞を獲った又吉さんの『火花』でなければ、観ていなかったかもしれない。
『火花』ってどんな話なんやろ?と気になっていたから。
ストーリー展開に激しいドラマがあるわけでもない。
心理描写で魅せる作品なんだろうな?って思った。
主人公の苦悩や葛藤なんかが小説では描かれているのではないだろうか?
夢ってすごくいいものだけど、残酷なものだと思う。
夢というのは生きる活力になるけど、同時に死にたくなる現実に直面させるものだ。
夢破れて去っていく人たちがいる。すごく切ない。
夢のないヤツ。チャレンジしないヤツにはわからないだろうけど。
でも生きている限り、バッドエンドはないというのがこの作品のメッセージ。
人生は続くからね。
小説もよんでみようかなぁと検討中です。
『火花』又吉 直樹 (著) |
追記
小説『火花』を読みました。(2016年11月11日)
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