若き才能ある二宮健監督の作品を。
『チワワちゃん』 監督は抜群のセンスではあるが、 物語は薄味で物足りない。 監督:二宮健 出演:門脇麦 成田凌 寛一郎 |
『ヘルタースケルター』『リバーズ・エッジ』など、漫画家の岡崎京子が94年に発表した青春コミック『チワワちゃん』を実写映画化。
SNSが普及した現代の東京を舞台に、若者たちが繰り広げる青春を描いた群像劇。
門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎らが演じる
自主映画『SLUM-POLIS』などで注目されて、『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』で商業デビューした弱冠27歳の新鋭・二宮健が監督。
2019年製作/104分/R15+/日本
配給:KADOKAWA
東京の街で青春を満喫していた、ある若者グループのマスコット的存在だったチワワ(吉田志織)が、東京湾でバラバラ遺体となって発見される。
元恋人のヨシダ(成田凌)や親友だったユミ(玉城ティナ)、チワワが好きだったナガイ(村上虹郎)ら残された仲間でチワワのことを語り合っていくが、誰も彼女の本名や素性を知らないことに気づく。
抜群のセンスで魅せる二宮健監督の作品は、その映像美や編集の巧さに驚かされるばかりではあるが、お洒落過ぎるがゆえに「ミュージックビデオ」的な感覚の作品である印象を受ける。それこそが二宮健監督の持ち味、彼の特技、長所であるのだが、僕は物語の面白さを引っ張るのには、もっと展開的魅力が欲しかった。
原作ものであるので、物語についても、ある程度の制約の中で表現せざるを得ないのかもしれないが、「冒頭の600万円強奪」のドラマでピークがあり、その後はこれと言ったドラマもない。
600万強奪に関しても、リスクを背負うには「少なすぎる」金額である。それも真正面から奪い取って走って逃げるという頭の悪さにはスリリングさは感じない。
チワワちゃんは何者かによって殺害されて、そのチワワちゃんの半生が仲間の視点によって語られていくのだが、こんなこと言うと観も蓋もないが「ハッキリ言ってどーでもいい」のだ。
チワワちゃんという自由奔放で無邪気な女性の恋愛ごっこ等、僕にとっては「どーでもいい」ことであり、チワワちゃんにも共感出来ないし、むしろ僕はチワワちゃんみたいな女性が大嫌いである。
若い女性には、チワワちゃんのような生き方に共感する人たちも多いだろうが、さすがにアラフォーの僕が心を震わすことはない。
この映画はチワワちゃんという人物に焦点を当てた映画であるので、「チワワちゃんが殺害された真相」については大事なものではない。その真相を描けば、映画の方向性が大幅に変わってしまう。
しかし、「チワワちゃんが殺害された真相」が後半に描かれていたとしたら、物語は飛躍的に面白くなっていただろう。
例えば、殺害の真相は「600万円強奪」とは無関係で、犯人はチワワちゃんの仲間内に存在した、とか。彼氏だったヨシダ君が犯人であったとか・・・。
原作ものなので、そこまで改変することは難しいが、何かしらの起伏がないと、映像センスで二時間近く引っ張るには僕にはシンドイ。
才能ある若き監督なので、今後の作品も興味深く追っていきたい、といったところで「カット、カット」。
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