世界から「ザ・ビートルズ」がいなくなったら・・・?という、思いつきそうで思いつかなかった「偉大なる発想」は、その発想が一番面白くて、内容は劣ってしまうのではないか?
そんな僕の個人的な心配をよそに、キッチリと明確な答えを出していた映画であった。
『イエスタデイ』 優れた発想だけのオチにならない。 発想を見事に具現化した物語。 監督:ダニー・ボイル 出演:ヒメーシュ・パテル リリー・ジェームズ エド・シーラン |
『トレインスポッティング』『スラムドッグ$ミリオネア』などのダニー・ボイル監督、『ラブ・アクチュアリー』の脚本家リチャード・カーティスがタッグを組んで、「ザ・ビートルズ」の名曲の数々に乗せて描く。
イギリスの人気テレビドラマ『イーストエンダーズ』のヒメーシュ・パテルが主演。
『マンマ・ミーア! ヒア・ウィ・ゴー』のリリー・ジェームズ、『ゴーストバスターズ』のケイト・マッキノンが共演。
シンガーソングライターのエド・シーランが本人役で出演。
2019年製作/117分/G/イギリス
原題:Yesterday
配給:東宝東和
「イエスタデイ(昨日)」まで、地球上の誰もがザ・ビートルズを知っていた。
イギリスの海辺の町で暮らしていたシンガー・ソングライターのジャック(ヒメーシュ・パテル)は、幼なじみで親友のエリー(リリー・ジェームズ)に支えられてきたが、全く芽が出ずに夢を諦めようとしていた。
ある日ジャックは、停電が原因で交通事故に遭遇した。
昏睡状態から目覚めると、この世には「ザ・ビートルズ」がいないことになっていたのだ・・・。
ビートルズという存在が一夜にして消滅したことで、ミュージシャンを志していた青年がビートルズの楽曲を自分の作ったものとして発表することでスターダムにのし上がっていく。
すごく安易な発想のようで、なかなか思いつかなかったコロンブスの卵のような発想だと思う。「なるほど!その手があったか!」とその優れた発想に感心する。ビートルズというところに設定を向けたのもイイところである。
しかし、発想が優れていても、それをカタチにすることは極めて難しい。
何故なら、発想が最大のオチになりかねないからである。
その発想以上のプラスアルファがないと、楽しめないものなのだ。
だが『イエスタデイ』では、ものの見事に優れた発想を具現化していた。確かに単純な物語であるとは言える。スターにのし上がって、昔ながらの自分を支えてくれていた女性とのフツーの幸せを選択する。単純な物語ではあるが、だからこそ難しい。
監督のダニー・ボイルは『スラムドッグ$ミリオネア』でも、幼少期から恋心を抱いていた女性を想い続けて、最後は二人が結ばれるという物語を描いていた。
途中途中で、疾走する音楽と共に目まぐるしく流れる映像で、映画をより盛り上げて気持ちを高ぶらせていく手法は『スラムドッグ$ミリオネア』と同様に、『イエスタデイ』でも表現されていた。
優れた発想を、見事に具現化した作品である、といったところで「カット、カット」。
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