最近、殺人鬼を扱った映画をよく観ているのだが、「襲う」「襲われる」という単純明快な設定は、やはり観ていて面白いのである。
『ステップファーザー 殺人鬼の棲む家』 お前は殺人がしたいのか?目的は何だ? 頭が悪くて、反撃を喰らう弱い殺人鬼。 監督:ネルソン・マコーミック 出演:ディラン・ウォルシュ,セーラ・ウォード,ペン・バッジリー |
家族に迎え入れた優しげな継父の正体が殺人犯である恐怖に晒される一家を描いた、1987年製作の『W/ダブル』をリメイクしたサスペンス・スリラー。
ドラマ『NIP/TUCK』のディラン・ウォルシュ、ドラマ『ゴシップガール』のペン・バッジリーなどが出演。
2009年製作/101分/アメリカ
原題:The Stepfather
未亡人であるスーザンは買い物中にデヴィッドと名乗る男性と知り合って、家族と死別したという似た境遇と優しそうな笑顔に惹かれて、彼女は彼と恋仲となる。
そんな矢先に士官学校を卒業したスーザンの息子のマイケルが家に戻ってくる。
当初はデヴィッドに反感を抱く彼だったが、やがて少しずつ打ち解けていくのだが、ある日、スーザンは近所に暮らす老女から、デヴィッドが一家皆殺しの指名手配犯に似ていると指摘される。
『W/ダブル』のリメイク版ということだが、『W/ダブル』は観ていない。この「突如、現れた父親(夫)が殺人鬼だった」という物語設定はすごく好きなジャンル。
「イイ人」を装って、ひとつの家庭に近づき殺人をしていくという物語は、ハラハラドキドキさせてくれる。
本作も続きの展開が気になるほど面白かったが、殺人鬼の「頭の悪さ」と「弱さ」が欠点である。それにカッとなりやすい性格のようで、すぐに頭に血がのぼる。正直、殺人鬼としては失格である。
こんな頭の悪い殺人鬼ならば、フツーの人が殺人鬼になった方が上手く殺害に成功するだろう。
前・父親の携帯電話をマナーモードに設定しないアホさや、ネット検索の予測変換履歴を消去していないこと、それに安易に無計画に人を殺し過ぎなのである。
男の目的は何なのか?本気で自分に相応しい「家庭を築くこと」なのか?それとも「殺人そのもの」が目的なのか?
「家庭を築くこと」であれば、カッとなりやすい短気な性格を直さなければいけない。子供の言動に我を忘れるほど怒りを抑えきれないのであれば無理な話だろう。
「殺人そのもの」が目的であるならば、あまりにもやり方が遠回りで手がこんでいる。わけのわからない手間暇かけて殺人の準備をするよりも、チャッチャッと殺してしまった方が早い。
頭悪いなぁ~と観ながら思ってしまうのは残念なところであるが、では「いざ、殺人!」というシーンでも弱くてヘマを繰り返す。相手にまんまと反撃されて瀕死の状態を負っているのだから、殺人鬼としても三流なのだ。正直、警察がこいつを全然捕まえることが出来ない理由がわからない。
特に疑問だったのは、ラストの肝心な結末である。
殺人鬼が狙っていた家族はまんまと生き残ったのである。そして、殺人鬼は別の家庭を狙って近づいてるという素敵な悪夢のラストだ。
しかし、「それでイイのか?!」ひとつの家族をまんま生き残らせて、それで放ったらかしでイイのか?殺人鬼のプライドもへったくれもありゃしない。あの家族を生き残らせて平気ならば、そもそも殺そうとしないで良かったではないか。
「家庭を築くこと」が本来の目的ならば、そもそも家族を殺す必要はないのである。自分に合わなかった家族だと判断しても、わざわざ殺す必要はない。
「殺人そのもの」が目的であったとするならば、それは白黒ハッキリ付けた方がイイ。相手を殺すか?自分が反撃されて殺されるか?そのどっちか?だ。
目的を達成出来ぬまま別の家族にターゲットを変えるなんて、ただのチキン野郎である。
文句を連ねたが好きな物語なので、本当は楽しんで観ていたのであった、といったところで「カット、カット」。
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