スタイリッシュな映像でカッコイイ世界観を醸し出している『CASSHERN』。海外では高く評価されているらしく、日本国内では酷評されているが、初めて今回『CASSHERN』を観てみた。
『CASSHERN』 紀里谷監督のセンスを発揮された映像。 気になったのは物語の暗さと役者の演技。 監督:紀里谷和明 出演:伊勢谷友介 麻生久美子 寺尾 聰 |
70年代に人気を博したタツノコプロの名作アニメ『新造人間キャシャーン』を、宇多田ヒカルのミュージック・ビデオ『FINAL DISTANCE』『traveling』の演出でも知られる紀里谷和明が、製作費6億円をかけて実写映画化。
“新造人間”として蘇った孤高のヒーロー、キャシャーンこと東鉄也が壮絶な戦いを繰り広げていく。
キャストには『カクト』の伊勢谷祐介、TVドラマ『白い巨塔』の唐沢寿明など。
CGスーパーバイザーに庄野晴彦、VFXスーパーバイザーに『ドラゴンヘッド』の木村俊幸、バトル・シーン絵コンテに『ガメラ』の樋口真嗣、プロダクション・デザインに『あずみ』の林田裕至が参加している。
2004年製作/141分/日本
配給:松竹
長年にわたる戦争の末に荒れ果てた世界で、人類を再生の道へと導くために、遺伝子工学の第一人者・東博士(寺尾聰)は人間のあらゆる部位を自在に造り出す“新造細胞理論”を学会で提唱した。
一方で博士の息子、鉄也(伊勢谷友介)は父へ反抗心から兵士として戦争に参加するが・・・。
紀里谷和明監督って何だか好きな人。人間としても独自の道を歩んでいて思考も興味深く面白い。
『CASSHERN』は日本国内で酷評されていたこともあって、僕自身は今まで観るのを躊躇していた映画であった。ただその映像のビジュアルに関しては、素直に「カッコエエ!」と思っていたのだ。
『CASSHERN』を観てみて「そこまで酷評される映画」ではなかった。
圧倒的なビジュアルセンスは抜群にカッコイイ。紀里谷監督のこだわりが相当にあったことが伝わってくる。
この映画がアニメを実写化した『CASSHERN』でなくて、オリジナルヒーローものであったなら評価も変わったことだろう。流石に『CASSHERN』を期待して観た人たちにとっては、「ちょっと待ってよ!」という内容であったのかもしれない。
「そこまで酷評される映画」ではない『CASSHERN』が、良いところもいっぱいあった『CASSHERN』が、酷評されることになった理由として僕が気になった点といえば、「物語の暗さ」と「演技」である。
センスで突っ走っていた映画なだけに娯楽作品としては、あまりにも「物語が暗かった」のだ。悲愴な顔をした役者陣の演技を延々と見せつけられるのである。
また役者の「演技」が上手くなかった。カッコイイ映像の中で、浮いている役者。
宮迫さんの役柄も不明であったし、シリアスな『CASSHERN』を撮るならば起用しない方が良かった。宮迫さんの登場はイチイチ気になるし、物語の妨げになる。宮迫さんが死んでいくシーンで、周りの登場人物が涙していたが、1mmも感情移入出来ない感動シーンであった。
全てにおいて感情移入出来ない映画であった。
『CASSHERN』はダークな物語にすることなく、徹底的に娯楽に徹してスタイリッシュな映像とアクションを見せた方が良かった。時間も2時間20分ではなく、1時間40分程度で「悲愴な顔をして」間延びするシーンを排除して作り上げれば面白かったはずである。
例えば、アメコミのようなヒーローを『CASSHERN』で描いていたのなら楽しめただろう。
「アベンジャーズ」のように、日本の「タツノコプロ」のヒーロー達は実写化して人気ヒーローになる十分なポテンシャルを持っている。
もし「ダークな物語」に徹したいのであっても、終始「悲壮感ある顔」は耐え難い。
『ダークナイト』や『ジョーカー』のように、メリハリがあれば良いとは思うが・・・。
とは言え、外部が色々と言ったところで、紀里谷和明監督は自分の確固たる信念と「撮りたいもの」が明確にある方だと思うので、「そのまま我が道を進んで欲しい」とも思える。
しかし色々と参考になる映画であり、単純に「つまらない」で片付けてしまうには惜しい映画であったということで「カット、カット」。
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