公開当時、劇場で観た北野武監督の『BROTHER』が無性にまた観たくなって、観た。
『BROTHER』 「笑い」と「暴力」の圧倒的センス。 漂う「死」の匂いと、男たちの「覚悟」。 監督:北野武 出演:ビートたけし, オマー・エプス, 真木蔵人, 加藤雅也, 大杉漣 |
北野武監督第9作目、長期にわたるアメリカ・ロケを敢行した、ビートたけし主演による日英共同制作のバイオレンス映画。
2000年製作/114分/G/
原題:BROTHER
配給:松竹
ヤクザ同士の抗争で組織を追われ全てを失った山本(ビートたけし)は、日本を脱出してLAに高飛びして、彼は留学中に消息を絶ってしまった弟・ケン(真木蔵人)を探し出した。
再会を喜ぶ間もなく、彼らのドラッグトレードの場に遭遇する山本。
やがて、山本はヤクの売人をしていた弟とその仲間たちと共に縄張りを拡大していく。
遂にはイタリアン・マフィアと抗争するまでに勢力を広げていくことになるが・・・。
公開当時、劇場に観に行ったきりで再視聴したが、この時のカッコ良さは異常である。
『ソナチネ』頃のたけしさんが一番カッコ良かったが。
ついに北野映画がアメリカロケで日本のヤクザ映画を撮っちゃった。
指詰め、腹切り、拳銃をコメカミに自害、日本における「覚悟の美学」が描かれている。
容赦なく敵対する相手を殺すが、自分たちも「いつでも死ねる覚悟」がある。
北野映画の暴力での見どころは、「一瞬」である。ダラダラと殴り合いなんてしない。一瞬で相手を仕留める。割れた瓶で相手の目を突き刺したり、折った割り箸を相手の鼻の穴に詰めて掌底を喰らわす。
一瞬の暴力を描くのと同じように、「遊び心」も必ず描かれる。拳銃の引き金に一本針金を引っかけて「相手に何本かの針金の中から選択させる」など、ブラックな遊びを見せることで、笑えると同時に恐ろしい暴力を突き付けてくるのだ。
芸人ビートたけしと、映画監督北野武の「笑い」と「暴力」と圧倒的な研ぎ澄まされたセンスが随所に散りばめられている。
『BROTHER』というタイトルにもあるように、本作ではアメリカに住む腹違いの弟、そしてヤクザの世界での兄弟が描かれているが、お笑い芸人ビートたけしは「たけし軍団」を作り、皆から「殿!」と呼ばれている。それは師弟関係ではあるが、『BROTHER』の世界観と重なる。
そして北野映画はどこかしら哀しく切ない。自分の「死」を予感している彼らが、何故か自らの意志でそこへ向かっていくのだ。
久しぶりに観た『BROTHER』は、やはりカッコ良かったということで「カット、カット」。
この記事へのコメントはありません。