ブライアン・デ・パルマ監督の描く戦争映画を観たのだ。
『カジュアリティーズ』 戦争の中での更なる惨劇がテーマ。 期待していたデ・パルマ作品ではない。 監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:マイケル・J・フォックス, ショーン・ペン, ドン・ハーヴェイ, ジョン・C・ライリー, ジョン・レグイザモ |
ベトナム戦争当時、実際に起きた事件をブライアン・デ・パルマ監督で映画化。
上官たちの犯罪に苦悩して告発へと至る若き兵士をマイケル・J・フォックスが演じる。
孤独な戦いと葛藤を実話に基づいて描く。
1989年製作/114分/アメリカ
原題:Casualties of War
1966年のベトナムでアメリカ兵エリクソンの所属する小隊は敵地の偵察任務に就くが、上官のミザーブ軍曹を筆頭とする4人の兵士が現地の娘を誘拐、さらにレイプしたあげく射殺するという暴挙に走る。
彼女を救うことが出来ずにいたエリクソンはその件を軍上層部に報告するが、それが原因でミザーブらから命を狙われることに。
デ・パルマ監督の戦争映画を初めて観ることに。
『スカーフェイス』『アンタッチャブル』『カリートの道』などのギャング映画は大好きな作品でもあるが、戦争映画はいかに描いているのか?気になっていた。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で一世を風靡したマイケル・J・フォックスが主演で、「なるほど」今度はベトナム戦争の時代にタイムスリップしたのか、と一瞬思ったがそんなわけはない。
戦争という過酷な状況下に置かれた人間の道徳性がテーマで、僕には正直「見たくないテーマ」であった。
実際に起きた惨劇を映画化したので物語については仕方のないことだが、少女に対しての暴行を扱った戦争映画であることにイヤな気持ちになる。
ベトナムで少女を誘拐して強姦して殺害するという惨劇を見せつけられるのは不快でしかない。
もちろん戦争映画なので戦争そのものが心地良く観れるものではないし、目を背けたくなる描写があって至極当然のことではある。
だが、少女が怯えて泣き叫ぶシーンを延々と見せつけられることは不快であり苦痛でしかない。
戦争というそれ自体が最悪な産物ではあるが、その中で起きた惨劇にも道徳が問われる。
少女を誘拐することも許されないが、戦争だって許されるわけではない。
犯行に及んだ兵士たちが悪いのは当然なのだが、そんな環境を作り出した戦争という状況自体が狂っているのだ。
本作が延々と、この少女に関するテーマで繰り広げられていて、僕が期待していたデ・パルマ作品ではなかった。
戦争を扱う映画で「期待していたデ・パルマ作品」と言うには良くない表現だと思うが、やはり『スカーフェイス』や『アンタッチャブル』が好きな僕は、どんなカタチで戦争映画を表現するのだろうか?というデ・パルマ監督の作家性を期待していたのだ。
戦争映画で少女がボロボロになって泣き叫ぶシーンは見るに堪えがたいものである。
マイケル・J・フォックスが口封じのために手榴弾で狙われて間一髪、命拾いするシーンなんかはデ・パルマ節も効いていて面白かったが。
戦争映画の道徳性を訴えかけることも必要ではあるが、デ・パルマ監督にはデ・パルマ監督にしか出来ない映像表現を見せて欲しかった、ってなところで「カット、カット」。
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